根室市の大規模断水について考える ― 急速ろ過施設で何が起きた可能性があるのか

  • URLをコピーしました!

※本稿は、現時点で公表されている情報と、水道処理技術に関する一般的な知見をもとにした考察です。実際の原因については、根室市上下水道施設課による調査、北海道関係機関、水道協会の水道技術者等による検証結果を待つ必要があります。本稿は特定の原因を断定するものではありません。

目次

はじめに

根室市では、浄水場の処理能力低下により、7月23日午後から浄水場からの給水停止をアナウンスしました。これにより市民生活に大きな影響を及ぼすが発生しました。

報道などによると、水源の水質変化(大量の藻の発生)に伴い浄水処理に支障が生じ、ろ過設備の機能回復作業などが行われたとされています。

一方で、根室市のHPのよると市内には浄水場が1つあり、市内全域の浄水を担っており、場内には監視・制御設備が整備された浄水場のようです。従来から職員の皆様の尽力で、安全安心な水道供給のため、日々厳格な管理がなされていたものと思います。

では、なぜ急速ろ過方式の浄水場で、このような事態が起こり得るのでしょうか。

現時点で考えられる一つの可能性として、「藻類増殖に伴う有機物によるろ過障害」があります。

急速ろ過は万能ではない

根室市の浄水場は、「根室市桂木浄水場」といい、急速ろ過方式の浄水方法により水道を作っているとされています。また、市のHPの写真を拝見する限り、立派な管理室がある浄水場で、おそらく毎日の凝集テストの結果から凝集剤注入量をきめて必要な凝集剤を注入する方法がとられてきたものと思います。この急速ろ過方式は、水道で広く採用されている高度な処理方式です。

しかし、急速ろ過では、濁質除去が特に特異な浄水方法であり、大量の藻の流入にも凝集剤の注入により適切に処理が行われていたものと思われます。しかし、それでもろ過池が閉塞に至ったとするならば、原因は、藻類から発生した粘性物質ではないかと考えられます。

夏季に水源で大量発生する藻類は、単純な濁質とは性質が異なります。藻類は細胞そのものだけでなく、細胞外に特定の条件で粘性のある有機物(細胞外高分子物質など)を放出することがあります。このような物質は、ろ過池の表面に付着しやすく、ろ過抵抗を急激に高める場合があります。

考えられる水処理上の流れ

今回の事象について、水処理技術の観点から考えられる一例を示します。

① 水温上昇などにより水源で藻類が大量発生する

② 浄水場に流入した藻類に対して、凝集処理や前塩素処理など必要な前処理を行う

③ 藻類の一部が損傷・分解し、細胞内部の有機物や粘性物質が水中に放出される

④ 凝集沈殿過程で十分に除去されなかった微細な有機物がろ過池へ到達する

⑤ ろ過砂表面に粘性物質が付着し、ろ過池が急速に閉塞する

⑥ ろ過能力が低下し、浄水処理能力が不足する

という流れです。

これはあくまで可能性の一つですが、水処理分野では藻類による「ろ過障害」として知られている現象です。

なぜジャーテストで防げなかったのか

浄水場では、一般的に凝集剤の量や水質条件を確認するため、一般的にジャーテストなどによる処理条件の確認が行われています。

しかし、ジャーテストで良好な結果が得られていても、実際の浄水場では予想以上の水質変化が発生する場合があります。

特に藻類由来の粘性有機物は、

・通常の濁質とは異なる挙動をする
・フロック形成や沈降性に影響する
・ろ過池を急速に閉塞させる場合がある

という特徴があります。

そのため、凝集条件が適切に管理されていたとしても、短時間で原水条件が大きく変化した場合には、処理設備が対応限界に達する可能性があります。

緩速ろ過でも藻類等の粘性物質が原因のろ過池閉塞が定期的に起こる

上記の推論に至ったのは、緩速ろ過でも藻類などが原因と思われる粘性物質によるろ過槽表面の砂の固着により、水の流れやすさが極端に悪くなり、必要な水量を浄水できなくなることがあるからです。

原水濁度が0に近い状態でも起こるため、依然その原因を探っていて、気が付きました。緩速ろ過の場合この砂の固着を取り除くことができればすぐにまた復旧することが可能です。

このような事象が緩速ろ過では定期的にみられるため、今回の事故でもどうような事象ではないかと考えました。

今後の検証で確認されるべき点

正式な原因究明では、以下のような項目が重要になると考えられます。

・事故発生前後の原水水質
・藻類の種類と濃度
・ろ過池の閉塞状況
・凝集沈殿処理の状況
・逆洗による回復状況
・前処理や薬品注入条件

これらを総合的に分析することで、今回の原因が明らかになると思われます。

おわりに

今回の事象は、単純な設備故障というより、水源環境の急激な変化が浄水処理システムに与える影響を考える上で、非常に重要な事例になる可能性があります。

近年、全国的に夏季の高水温化や水源環境の変化が指摘されています。

最終的な原因については専門機関による調査結果を待つ必要がありますが、今回の事例は「これまで問題なく運用できていた浄水システムが、想定を超える原水変化に直面した場合、どのような課題が生じるのか」を考えるきっかけになるものです。

よかったらシェアください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次