1.はじめに 私たちはGREEN×EXPO 2027への参加を目指しています
2027年、横浜でGREEN×EXPO 2027が開催されます。テーマは「幸せを創る明日の風景 ~Scenery of the Future for Happiness~」です。地球温暖化や気候危機、生物多様性の減少、ネイチャーポジティブ、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、そして植物や緑、農や食といったテーマが、この博覧会では掲げられています。私たちは、この「明日の風景」を考えるときに、水も欠かせない要素ではないかと考えました。今回は、私たちがGREEN×EXPO 2027への出展を通じて伝えたいと考えている「未来の水辺」の構想について、まだ企画段階ではありますが、皆様と一緒に考えてみたいと思います。
2.なぜ「花博」で水なのか? 緑のある風景には、必ず水がある
庭園、公園、植物園、テーマパーク。こうした緑豊かな風景を思い浮かべると、その中にはしばしば、池や水路、せせらぎ、噴水があります。そして水辺には、植物、微生物、魚、昆虫、鳥、人など、多くの生きものが関わっています。つまり、豊かな緑の風景を考えることは、豊かな水辺を考えることでもあると私は思います。では、そうした公園や庭園の池は、実際にはどのように維持されているのでしょうか。
3.公園や庭園の池は、どうやってきれいにしている? 「透明な水」と「豊かな水」は同じではない
現在、多くの池水処理では、池からポンプで水を汲み上げ、凝集剤を加え、機械ろ過を経て池へ戻すという仕組みが用いられています。凝集剤によって濁りの原因となる粒子をまとめ、砂や繊維などのろ材で取り除くことで、透明な水をつくることができます。しかし、「透明であること」と「水環境として健全であること」は、必ずしも同じではないと私は考えています。水中には、私たちの目には見えない窒素やリンなどが溶け込んでおり、透明度だけでは水環境の豊かさを測ることはできません。
4.そこで私たちが注目したのが「粗ろ過×緩速ろ過」 機械ではなく、自然の浄化能力を利用する
ここで、私たちの技術についてご紹介したいと思います。まず、大きな濁質やごみなどを取り除く粗ろ過を行います。その後、砂や砂利の層を水がゆっくりと通過する緩速ろ過を行います。重要なのは、緩速ろ過が単に砂で水をこしているだけではないという点です。砂の表面などには生物膜が形成され、そこに生息する微生物が水質浄化に関わっています。「砂のフィルター」ではなく「微生物が働く生きたフィルター」という言い方のほうが、この仕組みの本質を表しているのではないかと私は考えています。
5.電気も、薬品も、複雑な機械もできるだけ使わない 「自然の力」を利用するという選択肢
従来方式との違いとして、高い圧力を必要とせず、ポンプ以外の電力を小さくできる可能性があること、凝集剤などの薬品を必要としないこと、複雑な機械設備への依存を減らせることなどが挙げられます。砂・砂利・微生物というシンプルな仕組みだからこそ実現できる部分です。ただし、実際の削減効果は設備条件や水質によって変わりますので、「絶対に薬品が不要になる」「必ず何割削減できる」といった断定は避けたいと思います。
6.水処理施設を「庭園の風景」にする コンクリートの水槽ではなく、レンガの水辺へ
通常の緩速ろ過設備は、どうしても「施設」になってしまいます。そこで私たちが考えたのは、レンガと砂利、砂、植物、水、魚、微生物を組み合わせるという発想です。水をきれいにする施設を庭園の中に隠すのではなく、庭園そのものの一部にする。水処理施設を庭園に置くのではなく、庭園そのものに水処理の機能を持たせる。これが、今回の企画の核心にある「水処理」を「風景」に変えるという考え方です。
7.ところが、GREEN×EXPOの会場には池がありません そこで考えた「小さな水辺」
しかし実際には、GREEN×EXPOの会場に大きな池はありません。そこで私たちは、会場の中に「小さな水辺」をつくることを考えました。小型の観賞魚水槽を用意し、魚が排出する有機物や窒素などを含んだ水を粗ろ過にかけ、続いて緩速ろ過を通し、きれいになった水を再び魚の水槽へ戻すという循環をつくります。つまり、小さな水槽の中に、未来の水辺の縮図をつくるという発想です。
8.「浄化する水槽」と「浄化しない水槽」を並べてみる
同じ水槽容量、同じ魚種・匹数、同じ餌、同じ照明、同じ水温、同じ開始水、同じ期間など、条件をできるだけ揃えた二つの観賞魚水槽を用意します。一方は自然の浄化システムを備えた水槽、もう一方は比較対象となる水槽です。時間の経過とともに、水の透明度や水槽内の状態を比較するだけでなく、濁度やアンモニア、亜硝酸、硝酸、リン、pHといった項目を測定し、「本当に水は変わっているのか」を数値で確認します。見た目の印象だけでなく、水質そのものを比較する科学的な展示にしたいと考えています。
9.水をきれいにする主役は「見えない生きもの」 顕微鏡で微生物を見てみよう
水処理というと、ポンプやろ過器、配管などの「機械」を想像される方が多いかもしれません。しかし実際には、目に見えない微生物も、水をきれいにする大切な担い手です。会場では、緩速ろ過層から採取した試料を顕微鏡で観察していただくワークショップを予定しています。「何か動いている」「こんな生き物がいるんだ」という驚きの体験を通じて、砂の中に広がる小さな世界を知っていただきたいと思います。
10.遊びながら「水」を知る 水問題カルタ
もう一つのワークショップとして、水問題カルタを予定しています。水源や水循環、水質、生きもの、水不足、海洋プラスチック、気候変動など、水を取り巻くさまざまな問題を、遊びながら楽しく学んでいただく内容です。「水をきれいにする」ということは、単なる技術の問題ではありません。カルタを通じて、まずは水問題を自分ごととして考えるきっかけをつくりたいと考えています。
11.セミナーで「水の未来」を考える
室内セミナーでは、「自然の力を利用した水環境」というテーマで、もう少し深くお話しする機会を設けたいと考えています。池の水質管理や従来のろ過技術、緩速ろ過、微生物、生物多様性、省エネルギー、薬品使用量、そしてこれからの公園や庭園のあり方まで、幅広く扱う予定です。私たちは、水を「処理する」だけではなく、水と生きものが共存できる風景をつくりたいと考えています。
12.私たちが描く「明日の風景」
池の水がゆっくりとレンガ造りの水路へ流れていきます。その水は砂と砂利の層を通り、そこに暮らす微生物たちの働きを受けながら、少しずつ姿を変えていきます。きれいになった水は再び池へ戻ります。池には植物があり、魚が泳ぎ、虫が飛び、鳥が訪れます。そこには大きな機械も、複雑な設備もありません。自然の力を借りながら、人が自然と共存するための仕組みが、庭園の風景の一部になっている。これが、私たちの考える「幸せを創る明日の風景」の一つです。
13.最後に 「地球と。咲きに行こう。」
GREEN×EXPO 2027の公式キャッチコピーである「地球と。咲きに行こう。」という言葉に対して、私たちは、植物だけではなく水も、人だけではなく生きものも、機械だけではなく微生物も、という広がりを持たせたいと考えています。私たちはGREEN×EXPO 2027を通じて、自然の力を活かした「未来の水辺」の可能性を、多くの方に見て、触れて、考えていただける場をつくりたいと考えています。
