
はじめに――サウナブームから数年
日本でサウナブームが起こってから、もう数年が経ちました。最近はあの熱狂ぶりは少し落ち着いてきたように感じますが、サウナという文化そのものは、かなり広い層にしっかりと根づいた印象があります。もはや「サウナ=一部の愛好家のもの」ではなくなりました。今では、実にさまざまなスタイルのサウナが存在しています。
いま、サウナにはいろいろな形がある
大衆的な銭湯や大衆サウナ、健康ランドやスーパー銭湯のサウナ、カプセルホテルのサウナ、サウナ専用施設、個室・プライベートサウナ、そして自然の中にあるコテージタイプのサウナ。数え上げればきりがないほど、サウナの形は多様化しています。
そしてここに、一つの大きな変化があるように思います。サウナは「サウナ室に入る場所」から、「どんな場所で、どんな時間を過ごすかを楽しむもの」へと広がっているようにも感じるのです。特に郊外のおしゃれなコテージタイプのサウナには、都会の喧騒から離れられる、森や山、海などの景観を楽しめる、サウナのすぐ外で外気浴ができる、自然の音を聞きながら「ととのう」といった魅力があります。
自然の中にあるサウナの魅力
都会のサウナでは、「サウナ→水風呂→外気浴」という、設備として完成された動線を楽しみます。一方、自然の中のサウナでは、「サウナ→自然の水→自然の中で休む」という体験ができるように思います。整いスペースいから眺める海。緑豊かな森。脈々と続く森林がある。川の音が聞こえる。そうしたロケーションそのものが、サウナの価値になっているのです。
では、その中で「水」はどうでしょうか。
サウナにとって、水風呂の「水」はとても重要とされる
サウナの魅力というと、サウナ室の温度や湿度、ロウリュ、薪ストーブ、外気浴などが語られがちですが、水風呂の水にもこだわっているサウナは少なくありません。サウナ体験の中で非常に重要なのが水風呂です。そして水風呂は、単に「身体を冷やすための設備」ではありません。どんな水に入るのか。そこにもサウナの個性があるのです。
「水」が名物になるサウナ
静岡県の「サウナしきじ」は、いわゆるサウナの聖地として知られ、薬草サウナもしきじの魅力の1つですが、そのほかの大きな魅力の一つが水です。地下水を使った水風呂が。サウナだけでなく、水そのものが施設の魅力になっている例といえるでしょう。
富山県の「スパ・アルプス」も、北アルプスからの天然水を使った水風呂が大きな特徴です。水風呂の中で飲める水としても知られる天然水を、水風呂に使っているのです。
「水が良いから、このサウナに行きたい」という価値が、実際に生まれています。
山の水には、山の水ならではの魅力がある
山には、大小さまざまな水の流れがあります。小さな沢やせせらぎ。山から湧き出した水が集まり、流れになっています。日本全国には、この土地にこの名水、このせせらぎあり、という場所が結構多くあります。
そして、そうした水にはけっこう「夏でも驚くほど冷たい」という特徴があります。地中を通ってきた水が、地中の温度を反映しているのか、山のせせらぎには夏でも驚くほど冷たい水があります。人工的に冷やした水ではなく、自然が生み出した冷たさ。そこに大きな魅力があります。
フィンランドでは、「湖」が水風呂になる
サウナの本場フィンランドでは、サウナの目の前に湖があり、温まった身体を湖に入れて冷やすというスタイルがあります。つまり、水風呂という設備をつくるのではなく、自然そのものが水風呂になっているのです。サウナ、そして湖、そして自然の中で休む。この一連の流れそのものがサウナ体験なのです。
日本にも、「自然に飛び込めるサウナ」がある
長野県の「The Sauna」は、野尻湖に近接した自然の中でサウナを楽しみ、湖へ飛び込むことができます。サウナ室だけを見るのではなく、サウナと湖と森と外気浴を、一つの体験として楽しむ。「水風呂」という言葉を、もっと広く考えてもいいのではないでしょうか。
では、湖がない場所では?
日本には、湖のある場所だけでなく、山や沢、湧水、小河川、せせらぎがあります。土地土地にある、地元の人にはよく知られた名水が意外に多くあるものです。
もし、そうしたその土地の水を、特徴的な景観を活かすことができたら。自然の水をそのまま利用できるのであれば、それでも良いでしょう。でも、もし不安だったり、飲み水には厳しいような水だったら――そこで役立つのが、粗ろ過×緩速ろ過という私たちの技術です。粗ろ過×緩速ろ過は、極めて安価で、まだ人手をかけずに、まるで湧き水のような水をつくることができる技術です。
「山のせせらぎを、整い水にする」という発想
山のせせらぎをそのまま水風呂にするのではなく、自然の水を、自然の浄化システムに近い考え方で丁寧に処理する。粗ろ過によって大きな濁りや異物を取り除き、緩速ろ過によってさらに水を浄化する。そして、安全性や水質管理をきちんと考えた上で、その土地の水を「整い水」として体験していただく。そんな未来像です。
ここで一つ、誤解のないように申し添えておきたいことがあります。「自然だから安全」「ろ過すれば何でも飲める」というわけではありません。あくまで丁寧な処理と適切な水質管理があってこそ、安心して体験していただける水になるのです。
水風呂ではなく、「山そのものに入る」
山の中に小さなコテージがあります。薪ストーブのサウナ。サウナ室から出ると、そこには山から来た冷たい水があります。身体を沈める。水から上がる。森の中で外気浴。聞こえるのは、鳥の声、風の音、木々のざわめき、山のせせらぎ。
サウナで身体を温め、山の水で身体を冷やし、森の中で身体を休める。サウナ、水、自然が一つになる。
「山の水が、水風呂になる。」
いや、「山そのものが、水風呂になる。」
そして水分補給も、その水をふんだんに飲んでいただけます。これも大きな魅力です。
「水を処理する技術」から「水を体験する場所」へ
これまで水処理技術というと、「水をきれいにする」「水を安全にする」「水を使えるようにする」という役割でした。しかし、その先には「水の価値を、人に体験してもらう」という可能性もあります。山の水を処理する。その水を水風呂にする。水そのものを目的に、人が山へ行く。これは、水処理技術を「設備」ではなく、体験価値へと変えていく発想ともいえます。
いつかつくりたい、「水にこだわったコテージサウナ」
都会から少し離れた山間部。小さなコテージ。薪ストーブのサウナ。山のせせらぎ。自然の景観。冷たい山の水。粗ろ過+緩速ろ過の水処理。水風呂。森の中の整いスペース。
いつか「その土地の水を楽しむために訪れるサウナ」を、私は目指したいと考えています。
「サウナに行く」のではなく、「自然に帰る」
サウナブームによって、サウナは広く普及しました。これからは、「どれだけ熱いか」「どれだけ冷たいか」だけではなく、どんな場所で、どんな水に入り、どんな時間を過ごすのか、という価値も大きくなるかもしれません。そして、私たちが持っている水処理技術を使って、山の水を守りながら、人にその価値を体験してもらう。そんな場所を、いつかつくりたいと思っています。
エンディング
まだ、具体的な計画があるわけではありません。
でも、各地で山のせせらぎを見ていると、「ここにサウナ作ったら、面白いだろうなぁ」ときどきそんなことを考えます。
自然の中で生まれた冷たい水を、丁寧に浄化する。その水に身体を預ける。サウナで温まり、山の水で冷やされ、森の中で風を感じる。水と、サウナと、自然が一つになる。
「山の水を、最高の整い水に。」
いつか、そんなコテージサウナをつくることができたら。それは、今の私たちが思い描いている、ひとつの夢です。