昨日のブログでは、人口減少社会における社会インフラのあり方を考えるうえで、従来の費用や性能だけでは捉えきれない論点があるのではないか、という問題意識について触れました。
その中で、社会インフラを維持していくために必要となる「人」の側面を、もう少しきちんと見える形にできないか、という考えをご紹介しました。
本日、この考え方をもう一段整理したものとして、
「人的労働必要量(Human Labor Requirement:HLR)による社会インフラ評価指標の提案 ― 概念整理および議論のたたき台 ―」を、Concept Draft / Version 0.1 として公開しました。
今回公開した資料は、社会インフラの整備・更新・維持を考える際に、建設費、維持管理費、ライフサイクルコスト、性能、環境負荷といった従来の評価軸に加えて、そのインフラを長期的に支えるために社会としてどれだけの人的労働が必要となるのかという観点を、ひとつの評価軸として整理しようとするものです。
社会インフラは、造って終わりではありません。
運転、監視、点検、修繕、更新、調整、説明、そして時には廃止や撤去まで、長い時間をかけて人が関わり続けることで成り立っています。
これまでも費用や機能の議論は多くなされてきましたが、人口減少や担い手不足が進む社会では、**「その仕組みを維持するために必要な人を、将来にわたって確保できるのか」**という問いも、これまで以上に重要になっていくのではないかと考えています。
今回提案した 人的労働必要量(HLR) は、そうした問いを考えるための出発点として整理したものです。
HLRは、対象となる社会インフラについて、建設から運用、維持、更新、廃止に至るライフサイクル全体で必要となる人的労働投入量を見ようとする考え方です。
言い換えれば、金銭的なコストだけでなく、人的資源の観点から社会インフラの持続可能性を見ていくための補助線を引こうとする試みです。
もっとも、今回の資料は完成版ではありません。
あくまで Concept Draft / Version 0.1 であり、現時点では概念、対象範囲、基本的な整理方法、既存指標との関係、今後の論点をまとめた「議論のたたき台」です。
厳密な算定基準、分野横断的な標準的手法、間接労働の扱い、労働の質的差異の整理など、多くの課題はこれからの検討事項として残っています。
そのため、今回の公表は「これで完成です」という意味ではなく、むしろ逆で、この考え方は本当に使えるのか、どのように整理すべきか、どこに有効性があり、どこに限界があるのかを、実務や議論の中で確かめていきたいという意味合いを持っています。
社会インフラに関わる実務者、研究者、行政、事業者の方々をはじめ、さまざまな立場の方からご意見をいただきながら、今後必要に応じて改定していくことを想定しています。
私自身、この考え方を大きく打ち上げたいというよりは、まずは本当に使える視点なのかを丁寧に見極めたいと思っています。
もしこの概念が、将来のインフラ更新や維持管理の議論の中で、少しでも役に立つものであればうれしいですし、逆に実務上使いにくい、あるいは見直すべき点が多いのであれば、それも率直に受け止めながら改善していきたいと考えています。
今回公開した資料は、以下のニュースリリースページからご覧いただけます。
【お知らせ】人口減少社会における社会インフラ評価の新たな視点として「人的労働必要量(HLR)」の概念整理資料(Concept Draft / Version 0.1)を公開
今後は、こうした概念整理にとどまらず、具体的な適用可能性や使い方についても少しずつ考えていければと思っています。
引き続き、関心のある方からのご意見をいただければ幸いです。
