第1章:数字が語る危機――令和7年国勢調査速報値と「全域人口減少」のリアル
47都道府県中、人口が増えたのは「2都県」のみの衝撃
2025年に実施された国勢調査の速報値が公開されました。(総務省統計局・令和7年国勢調査:https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/index.html)
結果は、予想の範囲を超えるものではありませんでした。日本全体での人口減少傾向は、完全に確定しています。都道府県レベルで人口が増加したのは東京都と沖縄県の2都県のみ。残る45道府県はすべて人口が減少しました。
市町村レベルで見ると、さらに深刻な実態が浮かび上がります。人口が増加した市町村は全国で180自治体、全体の10.3%に過ぎません。残る89.7%の自治体では人口が減少しています。
「増えた自治体ゼロ」が14県に及ぶという地方都市の現在地
さらに注目すべき数字があります。市町村レベルで人口が1人も増えていない都道府県が、14県に達しました。
山形県(全35市町村)、静岡県(全35市町村)、高知県(全34市町村)、岩手県(全33市町村)、新潟県(全30市町村)、宮崎県(全26市町村)、栃木県(全25市町村)、秋田県(全25市町村)、愛媛県(全20市町村)、山口県(全19市町村)、鳥取県(全19市町村)、大分県(全18市町村)、福井県(全17市町村)、香川県(全17市町村)。
これらの県では、すべての市町村で人口が減少しています。例外がありません。この現実を前にして、水道インフラの設計思想をアップデートしないままでいることは、もはや許されないと私たちは考えています。
人口減少に耐えられる社会構造へのシフト
人口減少への対応は、安易な外国人受け入れだけで解決する問題ではありません。AIやIoTを活用した業務の効率化、より多くの日本人が働きやすい社会構造への変革、そして経営統合による省人化の推進。これらを組み合わせながら、人口が減っても社会が機能し続けられる仕組みを作ることが求められています。
水道の世界においても、この問いは待ったなしです。給水人口が減れば料金収入が減り、施設を維持する人材も財源も細っていく。その現実に向き合った設計の転換が、今まさに必要とされています。
第2章:限界を迎えた「水道の広域化・統合」に代わる新提案
政府が進める広域化一辺倒のシナリオの限界
人口減少への対応として、国が積極的に推進してきたのが水道事業の広域化・統合です。複数の自治体が水道事業を統合することで、スケールメリットを生かしてコストを分担し、技術者を集約するという方向性です。
この取り組みに一定の意義があることは否定しません。しかし、人手不足と資金不足が全域で同時に進行する中で、組織をまとめることだけを進めていても、根本的な問題は解決しません。
広域化した組織の中に、依然として老朽化した高コストの設備が並んでいれば、維持管理の負担は変わりません。組織の規模が大きくなっても、一人当たりが担う施設数が増えれば、担い手への負荷はむしろ重くなります。広域化はそろそろ限界に来ていると、私たちは見ています。
アプローチの転換:「システムそのものを変える」
組織の統合ではなく、浄水場というインフラそのものを「より長寿命で、運転管理に人手がかからないシステム」に切り替える。これが、私たちが提案する引き算の解決策です。
具体的には、「粗ろ過×緩速ろ過」という浄水処理方式への転換です。
第3章:進化を遂げた「粗ろ過×緩速ろ過」という強力な生存戦略
古臭いイメージの払拭:上向流粗ろ過との組み合わせ
緩速ろ過という言葉を聞いて、「濁度に弱い」「砂かきが重労働」「広大な土地が必要」というイメージを持つ方は少なくありません。かつてそのイメージは、ある程度現実を反映していました。
しかし今の粗ろ過×緩速ろ過は、かつての緩速ろ過とは別物です。
「上向流粗ろ過」を前処理として組み合わせることで、状況は根本から変わりました。下から上へと水を通す上向流粗ろ過が、原水の濁度負荷を大部分吸収します。緩速ろ過槽には常に一定濁度以下の水しか流入しないため、突発的な目詰まりが原理的に起きなくなります。砂かきをほとんど必要としない緩速ろ過が、現実のものとなっています。
土地面積の問題は依然として残りますが、人口減少が進み、空き地や農地の転用が容易になりつつある今の日本においては、かつてほどのハードルではなくなってきています。
日常管理の驚くべき「省人化」とメンテナンスのリアル
では、日常の管理にどれほどの手間がかかるのか。これが実務担当者にとって最も気になる点です。
上向流粗ろ過で捕集した濁質は、定期的にバルブ操作をして系外に排出します。この操作は自動化が可能です。VALCONのような電池式自動弁を活用すれば、電源も電波もない山間部の施設でも、スケジュール制御によって無人での排出が実現できます。
結果として、日常的なメンテナンスは実質的に定期的な巡回見回り(点検)程度まで削減できます。かつて複数人が常駐しなければならなかった浄水場が、月1回程度の確認作業で維持できるようになります。

企業独自技術による「表面のほぐし」と驚異の作業効率
砂かきはほぼ不要になりましたが、もう一つ知っておくべきことがあります。
緩速ろ過では、濁質の流入がなくても、砂層の表面が徐々に固着することがあります。これは微生物が分泌する粘着物質による現象であり、汚れではなく生物膜が健全に機能しているサインです。この固着に対しては、砂を削り捨てる砂かきではなく、表面を「ほぐす」という対処が適切です。
水未来研究所および関係会社が保有する独自の技術を用いたこのほぐし作業は、100m³/日規模の浄水場であれば1人で半日から1日で完了します。頻度は半年に1回から1年に1回程度で十分です。
かつて数人がかりで炎天下に何日もかけて行っていた砂かきとの差は、歴然としています。省人化の効果が最も実感できる数字です。
第4章:100年持つインフラが削減する、本当のコスト――「行政工数」の節約
コンクリートと砂・砂利がもたらす「壊れようがない」シンプル構造
粗ろ過×緩速ろ過の施設を構成する要素は、シンプルです。コンクリートの水槽、充填された砂利と砂、水を流す配管、そしてバルブ。精密な機械設備はほとんど存在しません。
精密機械がなければ、壊れる部品もありません。定期的な分解修理も、専用部品の交換も必要としません。シンプルな構造が、そのまま長寿命の根拠になります。
耐用年数30年の常識を破る「100年インフラ」の実証
一般的な浄水設備の法定耐用年数は30〜40年程度です。しかし適切に管理された緩速ろ過浄水場の実績は、その常識をはるかに超えています。国内外に、100年・120年にわたって稼働し続けている施設の実例があります。
これは、理論上の話ではありません。実際の施設で、実際に起きていることです。更新周期が100年に延びることの意味を、次の視点で考えてみてください。
発注・計画・監理……役所と業者から消え去る「見えない人件費」
浄水場の更新工事には、施設の劣化調査、更新計画の策定、設計業務の発注、施工業者の入札・契約、工事の監理・管理、竣工検査という一連のプロセスが伴います。自治体職員の工数だけでなく、コンサルタントや施工業者の人員も相応に必要になります。
30〜40年ごとにこのプロセスが発生するのと、100年に1回で済むのでは、必要な人材リソースが根本から違います。1施設あたりの差は限られていても、全国数万か所の水道施設に同じ計算を当てはめれば、削減できる「見えない人件費」の総量は膨大です。
人口減少時代において最も希少なリソースは、お金ではなく「人」です。更新工事の頻度を減らすことは、その希少な人的リソースを、より本質的な業務に振り向けることを意味します。
第5章:結び――人口減少時代の水道、新たな選択を
令和7年の国勢調査が示した現実は、地方水道の担当者にとって重くのしかかるデータです。しかしその現実は同時に、これまでの設計思想を変えるための、明確な理由でもあります。
広域化による組織統合を進めながら、浄水システムそのものを省人化・長寿命化の方向に変えていく。この両輪で進めることが、今後の水道経営の現実的な生存戦略です。
水未来研究所では、10年以上稼働している粗ろ過×緩速ろ過の現場をご案内しています。実際にメンテナンスを担当している方から直接話を聞き、日常管理の実態、かかっているコスト、施設の状態を、現地で確認していただくことができます。
人口減少と水道原価の低減にお困りの地方行政の水道担当の皆様、ぜひ一度お問い合わせください。
