地震や豪雨などの大規模災害が発生すると、私たちの生活に大きな影響を与えるものの一つが「水」です。多くの方は、災害への備えとして飲料水の備蓄を考えます。
一般的には、
- 1人1日3L程度
- 数日分の飲料水を備蓄する
という考え方があります。しかし、この量はあくまで「飲むための水」です。実際に生活を維持するためには、飲料以外にも多くの水が必要になります。
例えば、
- トイレを流す水
- 手洗いや衛生管理のための水
- 清掃に使う水
- 調理に使う水
- 介護や医療に関わる水
などです。災害時には、飲み水が確保できても、トイレが使えない、手洗いができない、衛生環境を維持できないといった問題が発生します。つまり、災害時に必要な水は、飲料水の備蓄だけでは十分とは言えません。
生活を維持するためには、飲料水以外の水源についても事前に考えておく必要があります。
給水車が来るから大丈夫、とは限りません
災害時には、自治体による給水車などの応急給水が行われる場合があります。
しかし、大規模災害では、
- 水道管の破損
- 浄水施設の被害
- 道路の寸断
- 給水車や人員の不足
などが発生する可能性があります。
そのため、発災直後からすべての地域へ十分な量の水が届けられるとは限りません。
また、限られた給水体制では、まず生命維持に直結する施設への対応が優先されます。
例えば、
- 病院
- 透析施設
- 医療機関
などです。
その後、避難所や地域住民への給水体制が整えられていきます。もちろん、給水車による支援は重要な災害対応の一つです。しかし、それだけに頼るのではなく、地域や施設ごとに利用できる水源を確保しておくことも重要です。
そこで注目されるのが、防災井戸という考え方です。
防災井戸とは何か?
防災井戸とは、災害時に利用することを想定して整備された井戸です。災害時の用途としては、大きく分けて以下があります。
飲料水として利用する井戸
飲み水や調理用水として利用する場合です。
この場合は、
- 水質検査
- 必要な水処理
- 継続的な管理
が必要になります。
生活用水として利用する井戸
飲用以外の用途として、
- トイレ用水
- 清掃用水
- 手洗い用水
- 衛生管理用水
などに利用します。飲料水ほど厳しい水質条件を求めない場合もありますが、用途に応じた水質確認は必要です。
災害時だけ使う井戸ではなく、普段から使える井戸が重要です
防災井戸について考える際、注意したいのが「普段使っていない設備は、いざという時に使えない可能性がある」ということです。「防災井戸」と聞くと、昔ながらの手押しポンプを思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、日本国内で一般的に流通している手押しポンプは、長期間使用しない場合、内部のパッキン部分が乾燥してしまい、水を吸い上げられなくなることがあります。
つまり、「設置してあるから、災害時に必ず使える」とは限りません。
災害時に確実に利用するためには、普段から使用し、状態を確認しておくことが重要です。そのため、現在では、平常時利用型の防災井戸という考え方が重要になっています。
例えば、
- 公園
- 学校
- 公共施設
- 避難施設
などで普段から利用し、災害時にも活用できる仕組みにします。
防災井戸は電気式ポンプを前提に考える
大量の水を災害時に供給する場合、手押しポンプだけでは対応できません。現在の防災井戸では、一般的な井戸設備と同じように、
- 水中ポンプ
- 制御盤
- 配管設備
などを備えることが現実的です。ただし、災害時には停電が発生する可能性があります。
そのため、
- 非常用発電機
- 自家発電設備
- 蓄電池
- 移動式電源
など、電源確保についても合わせて検討する必要があります。井戸があっても、ポンプを動かせなければ水を利用することはできません。
都市部ほど防災井戸の重要性が高くなります
防災井戸は、特に人口密度の高い地域で重要になります。
都市部では、
- 多くの人が生活している
- 避難者が集中する
- 給水拠点が混雑する可能性がある
ため、水不足の影響が大きくなる可能性があります。
特に、
- 大都市
- 集合住宅
- 学校
- 避難所
- 大型施設
などでは、災害時の水源確保を事前に検討することが重要です。
災害時に使いやすい給水設備まで考える
防災井戸では、単に水が出る設備を作るだけでは十分ではありません。災害時には、多くの人が短時間に水を必要とする可能性があります。
そのため、
- 複数の蛇口を設置する
- 給水ステーション形式にする
- 給水車へ補給できる設備まで整える
など、利用方法まで考えることが重要です。例えば、蛇口が1つしかない場合、多くの人が利用すると長時間待つことになります。一方で、複数の給水口を備えた設備であれば、効率的に水を供給できます。
普段は4人用の蛇口だけど、災害時は増設して10人、20人まで増やせるなどとできるなら、水汲みの行列を少なくできます。
防災井戸は「水源を作ること」だけではなく、「必要な人へ届けること」まで考える必要があります。
防災井戸を計画するときに重要なポイント
必要な水量を考える
防災井戸を計画する場合、どの程度の水が必要なのかを整理します。
例えば、
- 避難所の人数
- 地域人口
- 施設利用者数
などです。飲料水なのか、生活用水なのかによっても必要量は変わります。
水質を確認する
災害時でも、「水が出ればよい」というわけではありません。飲料用なのか、生活用水なのかによって必要な管理は異なります。
必要に応じて、
- 水質検査
- 水処理設備
を検討します。
電源を確保する
災害時には停電する可能性があります。
そのため、
- 非常用電源
- 発電設備
- 蓄電設備
などを検討します。
平常時から維持管理する
非常時だけ利用する設備ほど、普段の管理が重要です。
確認する内容として、
- ポンプが正常に動くか
- 水質に問題がないか
- 設備に異常がないか
などがあります。
防災井戸は地域や施設全体で考えることが重要です
防災井戸は、自治体だけのものではありません。例えば、
自治体
- 避難所
- 防災拠点
- 地域給水拠点
として。
企業
- BCP(事業継続計画)
- 工場稼働維持
- 従業員向け水源
として。
施設
- 老人ホーム
- 学校
- ホテル
- 大型施設
などの水源として。
それぞれの立場で、災害時の水確保を考えることが重要です。
まとめ:災害時に役立つ井戸は、平常時から準備された井戸です
防災井戸は、単に井戸を掘って手押しポンプを設置すれば完成するものではありません。
災害時に本当に役立つ水源にするためには、
- 必要な水量を確保できること
- 用途に合った水質であること
- 停電時でも利用できること
- 多くの人が使いやすい設備であること
- 平常時から維持管理されていること
が重要です。災害はいつ発生するかわかりません。
だからこそ、発生してから対応するのではなく、平常時から利用できる水源として整備しておくことが、災害時の大きな支えになります。
