ホテル、キャンプ場、老人ホームなどの施設を計画する際、水をどのように確保するかは非常に重要な検討事項です。一般的には、水道事業者から供給される水道を利用するケースが多くあります。
しかし、地域によっては、
- 水道代を抑えたい
- 水道だけで必要な水量を確保することが難しい
- 水道の味があまりよくないので、もっといい水を確保したい
- 災害も想定し独自の水源を確保したい
といった理由から、井戸を水源として利用することがあります。
ただし、施設で井戸水を利用する場合、家庭用の井戸とは考え方が大きく異なります。家庭で利用する井戸であれば、利用者は限られています。
一方で、ホテルの宿泊者、キャンプ場の利用者、老人ホームの入居者など、多くの人が利用する水の場合、安全で安定した供給が求められます。そのため、施設用の井戸は単に「井戸を掘る」だけではなく、水道設備として計画することが重要です。
今回は、施設の水源として井戸を利用する場合の考え方や、専用水道との関係、計画時の注意点について解説します。
施設で井戸水を利用するメリット
施設の水源として井戸を利用する理由はいくつかあります。
水道料金の削減
ホテルや温浴施設、キャンプ場など、水を大量に使用する施設では、水道料金が大きな負担になる場合があります。井戸を利用することで、水道料金の削減につながる可能性があります。ただし、注意が必要なのは、井戸は「無料の水源」ではないということです。
井戸を利用するためには、
- 掘削費用
- ポンプ設備
- 電気設備
- 水処理設備
- 維持管理費
などが必要になります。
そのため、初期費用と維持費を含めて総合的に判断する必要があります。
独自の水源を確保できる
山間部や郊外などでは、水道インフラの整備状況によっては、必要な水量を確保することが難しい場合があります。そのような地域では、井戸を利用することで施設独自の水源を確保できます。
特に、
- ホテル
- キャンプ場
- グランピング施設
- 山間部の宿泊施設
などでは、水源確保の選択肢として井戸が検討されます。
災害時の水源として活用できる
井戸は、災害時の水源としても活用できる可能性があります。ただし、停電時にはポンプが動かない場合があるため、
- 非常用電源
- 手動設備
- 防災計画
なども合わせて検討することが重要です。
施設用井戸と家庭用井戸の違い
同じ井戸でも、家庭用と施設用では求められる条件が大きく異なります。
家庭用井戸の場合
家庭用井戸では、
- 家族が利用する
- 使用量が比較的少ない
- 利用者が限定されている
という特徴があります。
施設用井戸の場合
一方、施設用井戸では、
- 多くの人が利用する
- 安定した水量が必要
- 水質管理が重要
- 設備管理が必要
という特徴があります。
例えばホテルの場合、
- 客室の水
- 浴室
- 厨房
- 清掃
など、多くの場所で水を使用します。
キャンプ場の場合も、
- シャワー設備
- トイレ
- 炊事場
- 共用設備
などで水が必要になります。
老人ホームでは、
- 入居者の生活用水
- 厨房
- 浴室
- 清掃
など、日常生活を支える重要なインフラになります。そのため、施設用井戸では「水が出るか」だけではなく、「必要な量を安定して供給できるか」が重要になります。
専用水道とは何か?
施設で井戸水を利用する場合、関係してくる言葉が「専用水道」です。専用水道とは、簡単に説明すると、水道事業者から供給される水道ではなく、施設などが自ら水源や設備を持ち、利用者へ水を供給する仕組みです。
水源としては、
- 井戸
- 河川水
- 湧水
などが利用される場合があります。つまり、井戸は専用水道における「水源」の一つです。
井戸だけではなく、
- 浄水設備
- 貯水設備
- 配水設備
- 管理体制
などを組み合わせて、水道システムとして成立します。
専用水道になる可能性がある施設
専用水道に該当するかどうかは、施設規模や給水方法などによって判断されます。そのため、すべての施設が必ず専用水道になるわけではありません。ただし、以下のような施設では、専用水道について確認が必要になる場合があります。
ホテル・旅館
宿泊者へ継続的に水を供給するため、
- 客室
- 浴室
- 厨房
など、多くの用途で水を使用します。
キャンプ場・グランピング施設
近年増えている施設です。自然豊かな場所では、水道インフラが十分でない場合もあり、井戸を含めた独自水源を検討するケースがあります。
必要な水として、
- シャワー
- トイレ
- 炊事場
などがあります。
老人ホーム・福祉施設
老人ホームでは、入居者の日常生活を支える水が必要です。
そのため、
- 安定した供給
- 安全な水質
- 継続的な管理
が特に重要になります。
その他の施設(病院、学校、工場、大型レジャー施設)
そのほかにも、
- 病院
- 学校
- 工場
- 大型レジャー施設
などで専用水道が関係する場合があります。
施設用井戸を作る場合に必要な設備
施設用井戸では、井戸そのものだけではなく、水道設備全体を計画します。
水源設備
代表的なもの:
- 深井戸
- 水中ポンプ
などです。
水処理設備
井戸水の水質によって、
- 除鉄設備
- 除マンガン設備
- ろ過設備
- 軟水化設備
- 消毒設備
などが必要になります。水質は地域によって異なるため、掘削後の水質検査結果をもとに計画します。
貯水・供給設備
必要に応じて、
- 受水槽
- 配管設備
- 制御設備
などを設置します。施設では使用量の変動が大きいため、安定供給のための設備計画が重要になります。
施設用井戸を計画するときの注意点
必要水量を正しく把握する
施設では、用途によって必要水量が大きく変わります。
例えば、
ホテル:
- 客室数
- 宿泊人数
- 浴室利用量
キャンプ場:
- 利用人数
- シャワー設備
- 炊事設備
老人ホーム:
- 入居人数
- 生活用水量
などを考慮します。
水質を早めに確認する
施設計画では、水質確認を早い段階で行うことが重要です。掘削後に、「想定以上の水処理設備が必要だった」となると、設備費や維持費が大きく変わる場合があります。
維持管理まで考える
施設用水では、作った後の管理も重要です。
必要になる管理:
- 水質検査
- ポンプ点検
- 水処理設備管理
- 記録管理
などです。
施設用井戸を検討する場合、誰に相談すればよいか
施設用井戸では、複数の専門分野が関係します。
井戸掘削会社
担当:
- 掘削
- 井戸施工
- ポンプ設置
地下水調査会社
担当:
- 地下水の可能性調査
- 地質確認
- 探査
水処理設備会社
担当:
- 水質改善設備
- 浄水設備
水道設計・水源計画を相談できる会社
担当:
- 水源選定
- 施設全体の水道計画
- 必要設備検討
施設用井戸では、単独の設備ではなく、水道システム全体として考えることが重要です。
弊社の役割について
弊社では、施設の水源検討段階からご相談いただけます。
例えば、
「新しくホテルを建設するが、水源をどうするか検討したい」
「キャンプ場を作る予定だが、水道設備をどう計画すればよいかわからない」
「既存の井戸計画が適切なのか確認したい」
といった段階から対応できます。
弊社の役割は大きく3つあります。
① 最初の相談窓口として
井戸が本当に適しているのか、また河川水など別の水源が適しているのかを含めて検討します。
② 専門会社との連携・内容整理
井戸が適している場合には、
- 地下水調査会社
- 井戸掘削会社
- 水処理設備会社
など必要な専門会社と連携します。
また、
- 調査報告書
- 掘削結果
- 揚水試験結果
- 水質検査結果
などを、専門知識がない方にも分かりやすく整理して説明します。
③ セカンドオピニオンとして
すでに井戸掘削会社へ依頼している場合でも、
- 提案内容を確認したい
- 調査結果を理解したい
- 技術的な判断を第三者に確認したい
という場合に対応できます。
まとめ:施設用井戸は水源ではなく水道システムとして考える
ホテル、キャンプ場、老人ホームなどで井戸を利用する場合、重要なのは単に水が出る井戸を作ることではありません。
必要なのは、
- 必要な水量を確保すること
- 安全な水質を維持すること
- 長期間安定して供給できる設備を作ること
です。
井戸は施設にとって重要な水源になりますが、掘削だけではなく、水処理設備や管理体制まで含めて計画することが大切です。
