受水槽清掃の頻度を劇的に下げる新常識 ―「上向流粗ろ過」による前処理がもたらす管理コストの最小化

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1. 受水槽における「砂泥堆積」のメカニズムと管理上の課題

谷部の水源から高台にある浄水施設(浄水場)へ水を送る際、多くの施設では一度受水槽に水を貯めてからポンプで送り出す構成をとっています。この受水槽、実は以前から維持管理コストの発生源になっています。

原水に含まれる細かな砂や泥、有機物は、受水槽の中で流速が落ちると底部に沈降・堆積します。堆積した汚泥はそのまま放置すると嫌気性分解が進み、臭気や水質悪化の原因となります。また、沈積物が揚水ポンプに吸い込まれることで、ポンプ内部の摩耗や「砂噛み」による故障リスクも高まります。

これを防ぐための定期清掃が、現場に重くのしかかっています。受水槽の清掃には断水を伴う調整が必要であり、槽内への作業員の立ち入りには安全管理上の配慮も求められます。水を抜き、内部を洗浄し、消毒して、水質確認をしてから再稼働する。この一連の工程は、人手と時間の両方を大きく消費します。

人口減少が続く中、自治体の技術職員数は減り続けています。経験を積んだ職員が退職し、引き継ぎも難しくなる。そうした状況で、受水槽清掃のような定期的な重労働作業を従来通りの頻度で続けることは、組織の体力を着実に削っていきます。「なんとかなっている」という状態が、いつまでも続く保証はありません。


2. 解決策としての「上向流粗ろ過(URF)」の導入

この問題への実践的な解決策として、受水槽の手前に「上向流粗ろ過(URF)」を設置するアプローチがあります。

URFの仕組みはシンプルです。砂利を充填した槽に、原水を下から上へと通水する。それだけです。水が砂利層を通過する過程で、懸濁物質が砂利の表面に付着・捕捉され、あるいは流速の低下によって沈降します。物理的ろ過と自然沈殿の複合作用により、薬品も電力も使わずに濁質を大幅に除去できます。

受水槽に流入する前に濁質の大部分を取り除いておけば、受水槽への汚泥堆積量は劇的に減少します。結果として、受水槽清掃の必要頻度が下がります。これがURF導入の最も直接的な効果です。

URF自体の維持管理は、半月から1ヶ月に一度の排泥弁開放のみです。砂利層に捕捉された汚泥を定期的に排出することで、処理性能を維持します。この操作は受水槽清掃と比べて格段にシンプルであり、作業員が槽内に立ち入る必要もありません。

さらに、この排泥操作を自動化するソリューションとして、弊社が開発した電池式コントローラー「Valcon」シリーズがあります。Valconは12V電池を電源とするため、商用電力がない無電化環境でも動作します。タイマー設定により排泥弁の自動開放を制御するため、人が現地に赴く頻度をさらに減らすことができます。常駐スタッフがいない小規模施設でも、URFを安定的に運用できる環境を整えられます。

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3. 導入によって得られる「二次的」なメリット

URFの導入効果は、受水槽清掃の頻度低減にとどまりません。前処理として濁質を除去することで、システム全体に波及する複数のメリットが生まれます。

揚水ポンプの保護

受水槽に流入する前の段階で砂や泥を除去することで、ポンプへの砂噛みリスクが低下します。砂噛みはポンプ内部のインペラや軸受けを摩耗させ、早期消耗や故障の要因の一つとなります。つまりURFによる前処理は、ポンプの故障頻度と修繕コストの削減に直接貢献します。ポンプの交換や分解整備は高額な出費であり、その頻度を下げることはLCC削減として明確な効果をもたらします。

後段浄水施設への負荷軽減

受水槽の後段に緩速ろ過池や急速ろ過施設など浄水施設が設置されている施設では、流入濁度の低下が後段への処理負荷の軽減につながります。緩速ろ過の場合は砂かきの頻度が減り、急速ろ過の場合は凝集剤材の注入量や除去汚泥量が減少します。薬品消費量の削減、洗浄作業の省力化。これらは維持管理コストの複合的な削減効果として積み上がっていきます。

URFは受水槽の管理改善という「点」の導入でありながら、システム全体の維持管理コストを「面」として改善する波及効果を持っています。


4. 「砂利で本当に落ちるのか?」という疑問に応える

URFの提案をすると、しばしばこういう疑問をいただきます。「薬品も使わずに、砂利を通すだけで本当に濁りが取れるのか」と。

その疑問はもっともです。直感的には、砂利の隙間を通った水がきれいになるとは想像しにくいかもしれません。しかし、URFの除去効果は単純な「こし取り」ではありません。砂利表面への懸濁粒子の付着・捕捉、砂利間の低流速域での自然沈降、そして砂利が傾斜板状に機能することで生まれる沈殿促進効果。これら複数のメカニズムが組み合わさることで、1段のURFで40〜80%の濁度除去が実現されています。

「理論は理解できるが、実際の運用イメージが湧かない」という方のために、弊社では技術資料の提供に加え、実際に稼働しているURF設置箇所への現地視察のご案内も随時受け付けています。動いている設備を自分の目で確認することが、導入判断の最も確かな材料になります。お気軽にお問い合わせください。


5. 結び:管理を「スマート」に。持続可能な水道経営への一歩。

水道施設の管理において、「人間の手をかける」ことを前提とした設計が長年続いてきました。しかし、その手が確実に減っていく未来が目の前にあります。

職員が減り、経験が継承されず、一つひとつの維持管理作業に割ける時間と人員が縮小していく。その現実の中で、「今と同じやり方を続ける」という選択は、気づかないうちに組織の限界を前倒しにしていきます。

受水槽清掃の頻度を下げることは、一見地味な改善に見えます。しかしその効果は、直接の人件費削減にとどまらず、断水調整の負担軽減、安全管理リスクの低下、後段設備への負荷軽減、ポンプ寿命の延長と、広く波及します。そして何より、限られた人員が本当に必要な業務に集中できる余裕を生み出します。

「何もしなくていい期間を延ばすこと」が、人手不足時代の最大のコスト削減である。そう私たちは考えています。URFによる前処理の導入は、その考え方を受水槽管理という具体的な現場で実現する、最初の一歩になります。

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