沢水の濁り対策に「上向流粗ろ過」|身近な砂利でできる簡易ろ過

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目次

1. 雨が降ると濁るようになった沢水

水道が整備されていない地域では、現在でも井戸水や沢水などを生活用水として利用している方がいます。特に沢水は、以前であれば「そのままでも使えるほどきれいな水」だった場所も少なくありませんでした。

ところが近年、雨の降り方が変わってきたことで、事情が変わりつつあります。短時間に集中して強い雨が降るようになり、雨天時に沢の水が急に濁る、雨が止んでもなかなか濁りが落ち着かない、といった問題が起こるようになっています。以前は一晩も経てば透明度が戻っていたのに、今では数日間濁りが続くことも珍しくない——そうした声を、現場から聞くことが増えました。

今回は、こうした沢水の「濁り」対策として比較的取り組みやすい方法である「上向流粗ろ過」を紹介します。高価な設備を使わず、ホームセンターで手に入る材料を組み合わせて作ることができる、身近な対策です。

2. まずは「濁り」と「水の色」を分けて考える

沢水の水質に関わる問題には、いくつかの種類があります。雨による土砂などの濁り、黄色から茶色に見える着色、水のにおい、水の味、微生物などによる衛生上の問題——これらはすべて、同じ方法で取り除けるわけではありません。

今回紹介する上向流粗ろ過がまず対象とするのは、雨天時などに発生する「濁り」、すなわち土砂や細かい粒子が水に混じった状態です。一方で、水が薄い黄色から茶色に見えるような着色の原因となるフミン質などは、単純な砂利ろ過だけでは十分に取り除くことが難しく、別の処理方法を検討する必要があります。

まずは「濁り」と「色」を分けて考えることが、適切な対策を選ぶための第一歩です。

3. 上向流粗ろ過とは?

「粗ろ過」とは、砂利の層に水を通して、濁りの原因となる土砂などの粒子を取り除く方法です。今回おすすめするのは、その中でも「上向流粗ろ過」という方式です。

一般的なろ過では水を上から下へ流しますが、上向流粗ろ過では逆に、原水を砂利層の下から入れ、砂利の間をゆっくりと上向きに通過させ、上部から処理水を取り出します。流れのイメージとしては、「沢水 → 砂利層の下部へ流入 → 砂利層を上向きに通過 → 上部から処理水を取り出す」という順序です。

水が砂利の層をゆっくり通過していく過程で、濁りの原因となる粒子が砂利の隙間に捕捉されます。上向きに流すことで、砂利層が過度に詰まりにくくなるという利点もあります。

4. 1段よりも複数段——最低3段程度がおすすめ

粗ろ過は、1つの槽だけで処理するより、複数の槽を直列につないで繰り返し砂利層を通したほうが、濁りをより確実に落とすことができます。1段目の槽で処理した水を2段目へ送り、2段目を出た水を3段目へ送る——こうして最低3段程度の処理を行うことをおすすめします。

ただし、「必ず3段でなければならない」という意味ではありません。原水の濁り具合、使う水の量、設置場所の条件、必要とする水質などによって、適切な段数や槽の大きさは変わります。まずは「最低3段程度」を一つの目安として考えてみてください。

上向流粗ろ過の模式図

5. 容器はホームセンターで購入できるものでOK

専用の高価なろ過装置を用意する必要はありません。容器は、ホームセンターなどで販売されている100L前後の丸型の大型バケツなどを利用できます。同じような容器を複数用意し、それぞれを配管で接続します。

1段目で砂利層を下から上へ通した水を2段目の槽へ送り、そこで再び下から上へ砂利層を通す。これを最低3段程度繰り返します。難しく考える必要はなく、ホームセンターで手に入る材料を組み合わせて作れる、比較的簡易なろ過槽として考えてください。

6. 配管もホームセンターでそろえられる

配管には、20A程度の塩ビ配管を使用します。バケツと配管を接続する部分は、給水栓ソケットとバルブソケットを組み合わせることで、比較的簡単に作ることができます。容器に開口部を設け、内側にパッキンを入れ、給水栓ソケットとバルブソケットで容器を挟み込むように固定します。そこへ20Aの塩ビ管を接続すれば、基本的な配管部分の完成です。

材料はすべてホームセンターでそろえることができます。特別な工具や技術がなくても、丁寧に作業すれば組み立てることができる構造です。なお、実際に製作する際は、容器の材質や使用する継手に適合するパッキン・接着方法などを事前に確認してください。

7. 砂利は5〜20mm程度を3種類に分ける

ろ材として使う砂利は、沢の中などにある5mm以上20mm以下程度のものを利用することを想定しています。砂利を大きさごとに3種類程度にふるい分け、砂利層は下から上へ向かって徐々に細かくなるように敷いていきます。具体的には、下側に大きめの砂利、中間に中くらいの砂利、上側に小さめの砂利という順番です。

このように層を分けることで、大きな粒子から順番に捕捉しやすくなり、ろ過の効率が上がります。砂利層全体の厚みとしては、60cm程度をひとつの目安としてください。

8. 最下部には排泥管を設ける

砂利で濁りを取り続けていると、砂利層の中、とくに下部には泥などが少しずつたまってきます。そのまま放置すると処理能力が低下するため、ろ過槽の最下部には排泥用の配管とバルブをあらかじめ設けておく必要があります。

普段はバルブを閉めておき、必要なときに開けることで、底部にたまった泥や濁水を外に排出することができます。後からこの機能を追加するのは手間がかかるため、最初の設計段階から組み込んでおくことが大切です。この排泥機構があることで、長く安定して運用していくためのメンテナンスがぐっとしやすくなります。

9. 設置後、どのくらいで効果が出る?

上向流粗ろ過を設置したからといって、すぐに翌日から安定した透明な水になるわけではありません。一般的な目安としては、水を流し始めてから数日程度で濁りが下がってきたことをおおむね実感できます。ただしこれはあくまでも目安であり、地域の水質・沢の状態・水温・流量・砂利の状態などによって、安定するまでの期間は大きく変わります。

季節による違いもあります。夏は比較的水質が安定するのが早く、冬は安定するまでに時間がかかる傾向があります。また、1か月程度経過するころには、濁りだけでなく、水のにおいや味についても一部変化を感じられる場合があります。ただしこちらも「1か月で必ず改善する」というものではありません。

粗ろ過は設置して終わりではなく、実際の水の状態を見ながら運用していくことが大切です。

10. 地域の水質によって、必要な方法は変わります

沢水は、地域によって水質が大きく異なります。同じ「沢水」でも、雨が降ったときにどの程度濁るのか、濁りがどのくらいの期間続くのか、普段の水質はどうなのか、どの程度の水量を使うのか——これらによって、適したろ過方法や装置の規模は変わってきます。

「自分の地域ではどのくらいの規模にすればよいのか」「何段くらい必要なのか」といった疑問がある場合には、原水の状態や利用状況を確認しながら、地域の水質に合わせたアドバイスも可能です。まずは現在の沢水の状態をできるだけ詳しく把握しておくことが、適切な設計への第一歩になります。

11. 台風などの大雨のときは、そもそも水を入れない

ここは非常に重要なポイントです。上向流粗ろ過は、どんなに濁った水でも処理できる万能な装置ではありません。特に台風クラスの大雨が降ったときには、沢そのものが激しく濁ることがあります。

こうしたときに大切な判断は、「濁った水を頑張ってろ過する」のではなく、「そもそも水を入れない」というものです。大雨が予想される場合には事前に取水を止め、台風や大雨が通過した後もすぐに取水を再開しないようにします。沢の濁りがある程度落ち着いてから、改めて水を取り入れるようにしてください。無理に濁水を通し続けると、砂利層が詰まったり、処理能力が急激に低下したりする原因にもなります。

12. 「濁り」と「水の色」は別の問題です

ここまで紹介してきた方法で比較的対応しやすいのは、土砂などによる「濁り」です。一方で、沢水が薄い黄色から茶色に見える場合、その着色の原因となっているフミン質などの物質は、単純な砂利ろ過では十分に取り除けないことがあります。濁りと色は、見た目が似ていても原因も対処法も異なる問題です。

現在、このような水の色をどのように取り除くかについては、処理方法を検討・実験しています。方法がまとまり次第、あらためてこちらのブログでご紹介します。

13. 上向流粗ろ過の次に目指したい「緩速ろ過」

今回紹介した上向流粗ろ過は、沢水の濁りを減らすための前処理として有効な方法です。さらに水をきれいにしていくのであれば、「上向流粗ろ過 → 緩速ろ過」という組み合わせが、より理想的な処理方法のひとつになります。

まずは費用を抑えて上向流粗ろ過を試してみて、その効果を確認する。そのうえで、さらに水質を改善したい場合に、緩速ろ過など次のステップを検討する。こうした段階的なアプローチが、小さな集落や個人での取り組みには現実的でおすすめです。

14. まとめ——まずは「濁り」から対策してみる

以前はほとんど濁らなかった沢水が、大雨のたびに濁るようになった。そんな場合にはまず「濁り」と「色」などの問題を分けて考え、取り組みやすいところから対策してみることが大切です。

上向流粗ろ過なら、100L前後の大型バケツ・20A程度の塩ビ配管・そして身近な砂利を使って、比較的簡単なろ過装置を作ることができます。最低3段程度の粗ろ過を基本として、原水の状態を見ながら段数や規模を調整していく。そして大雨のときには無理にろ過せず、取水そのものを止める。まずはこうした小さな対策から、沢水の濁り対策を始めてみてはいかがでしょうか。

なお、ここで紹介している粗ろ過は、主として「濁りを減らす」ための処理です。濁度が下がったからといって、その水が飲用水として安全になったことを意味するものではありません。飲用を目的とする場合には、必要な水質検査や消毒なども含めて、別途ご検討ください。

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