災害後、20L/日で乗り切る!節水術(連載4/5回)

自衛隊風呂の外観写真

── 入浴・トイレ・炊事のリアル節水術 ──

通常の生活で一人が使用する水の量は1日180~250L程度です。

しかし、災害でもし水道が使えなくなったら、復旧するまで1人当たり20Lの水で生活しなければなりません(水道の耐震化計画等策定指針_厚生労働省(2015.6)p.21表3)

この20Lを生活の中で利用目的にどう割り振るかが重要です。

今回、能登震災で支援者としてほぼ生活用水なしの状況下で半年間生活した経験をもとに、その節水術をお伝えすることができれば嬉しいです。

目次

生活シーンと “代替手段” 一覧表

災害下の理想の水利用スタイルの紹介

まずは理想の水利用スタイルの一例を以下に示します。

利用シーン平常時 (L)災害時 (L)節水手段・方法
飲用・調理33支援物資(ペットボトル水)
皿・調理器具洗い200アルコール+キッチンペーパー
皿の上にラップ、使い捨て皿の活用
歯磨き10歯磨きのあと、マウスウォッシュで口をすすぐ
支援物資(ペットボトル水)で口をすすぐ
洗面31ウェットシート
手洗い31ウェットシート、アルコール消毒
入浴/シャワー1002髪:ドライシャンプー
体:専用ウェットシート、濡れタオルで拭く
掃除50ウェットシート、アルコール+キッチンペーパー
洗濯4010~15
トイレ500凝固剤使用、簡易トイレ、仮設トイレ
22517~22
1人当たり1日の使用水量

水利用スタイルの解説

飲用・調理

大災害発生時は、全国から被災地に支援物資としてペットボトルが届くことになると思います。それらは、避難所や救援センターに水のペットボトルとして受け取ることになるでしょう。ただ、3日間~5日間は輸送上の問題などから届かない可能性があるため、被災から5日間に必要な必要最低限のペットボトルは自宅で準備するようにしましょう。

どうしても”ない”という状況のために、次回の記事では水の確保方法や浄水方法についてを投稿する予定ですので、そちらをご覧ください。

皿・調理器具の洗浄

使用した皿・調理器具は、水は使用せず、キッチンペーパーによる清拭とアルコール仕上げで乗り切りましょう。能登災害支援ではキャンピングカーで自炊生活していましたが、キッチンペーパーでアルコールも使いながら清拭して、最後にもう一度アルコールでふき上げて仕上げるというスタイルで半年間過ごしました。

けっこうどんな料理でも清拭とアルコール仕上げできれいになります。カレーみたいな鍋や食器が汚れやすい料理でも思った以上にきちんと清潔に保てます。

能登支援では、アルコールは業務でも業務外でも頻繁に使うことになり、大量に使うことになりました。消毒用、洗浄用、掃除用などいろいろと使えます。個人的にはこれは家庭に1つはあってもよいのではと思います。実際、私の家にも5Lボトルを1つ置き、普段から小分けにして使用しています。注意点としては、ブランドはこだわる必要はありませんが、75%以上のアルコール度数であることです。あと、飲んではいけません(飲めないよう薬品添加されています)。

歯磨き

歯磨きは、いつもどおり歯磨きした後、ペットボトルの水か、マウスウォッシュ液で口をすすぎます。歯を磨いて、さらに、口臭予防、歯周病対策にもなっておススメです。

洗面

顔はボディシートで拭くにとどめ、水を使用する必要はありません。女性はそうもいかないという方もいると思いますが、マスクで隠すとか、ペットボトルの水を洗面器にためながら最小限の水で洗うなど工夫できればと思います。

手洗い

手洗いは、基本的に水を使わず、アルコールを吹きかけてキッチンぺーパーで拭く、あるいは専用シートで拭くというスタイルが水を節約できてよいと思います。個人的に、朝、コンタクトレンズを装着する直前だけ、事前にアルコールで清潔にした後、指先を少量のペットボトル水で洗っていました。

入浴/シャワー

ボディシートやドライシャンプー利用について

入浴やシャワーは能登震災後の支援期間中に、水に最も困ったもののうちの1つです。支援期間のほとんどが冬だったこともあり、体は専用シートで拭くスタイルでも、それほど苦にはなりませんでした。

一方、頭髪はドライシャンプーしても、髪がべとついていたのが、多少さっぱりはしますが、ドライシャンプー後にしっとりに変わるというような変化で、お風呂への欲望が抜けませんでした。ふき取ったタオルをどうしたらよい??、と最初に試したときは思いました

頭髪だけでもどんなに少量の水で洗うにも1~1.5L程度は水を使うことになると思います。一度、体も含めて、どの程度少量の水で頭と体を洗えるのか、試してみることをお勧めします。

銭湯利用について

入浴については、震災後も銭湯がもしかしたら利用できるかもしれません。

都内には地下水を使用している銭湯が結構あり、地下水をくみ上げ浄化する設備にトラブルが起きておらず、かつ、ボイラー設備に支障がなく、さらに従業員が最低限働ける状態なら、銭湯サービスを提供してくれるかもしれません。

私の自宅の近くの銭湯で一度話を伺ったときは、もろもろ条件がそろえば、地下水なのでサービス提供できると思います、とおっしゃっていました。また、都内の銭湯は1回500円程度の低料金でやってくれていますが、「地下水で経営液になんとかなので、水道だとこの料金だとやっていけないんじゃないですかね」というお話でしたので、地下水で運用されている銭湯は少なくない、という印象を受けました。

銭湯写真
災害時は、街中の銭湯が頼みの綱になるかも
自衛隊風呂の展開について

さて、さらに本当に困っている人が多い地区では、自衛隊によるお風呂サービスの提供がありえます。

自衛隊風呂の外観写真
自衛隊風呂 こちらは練馬の湯

自衛隊風呂もどこでも展開できるというわけでなく、現地の条件次第での展開となります。

私も能登震災の支援期間中の中後半は利用させていただきました。普通の銭湯のように、手前に脱衣所があり、奥に湯船と洗い場があります。短い時間でさっぱりできて、本当に極楽でした。ただ、みんな困っている時期は、多くの人がやってきますので、1時間待ってから入るということもざらにありました。被災者ではなく支援者という立場ということもあり、毎日入るのは控えて、2日や3日に1度で我慢するようにしていました。

掃除

震災で破損した家屋や部屋の中の片付けにおいて、ほこりや泥などの汚れをぬぐうのに、水があったらよいのですが、できるだけボディシートなどの大判のウェットシート、アルコール+キッチンペーパーで代用するのが、水の節約という意味では望ましいのではと思います。

洗濯

正直一番困ったのが洗濯です。能登の支援中も洗濯に困った/困ってる、という声を入浴よりも一番聞いたと思います。行政が用意したわずかなコインランドリーカーに数時間待ちになるくらい、みなさん困っていました。

被災者の中には、入浴サービスを使えるけど、入っていない方がそこそこいて、理由をお尋ねしたところ、洗濯ができていないからと答える方もけっこういらっしゃいました。

また洗濯には一番水を使います。一般的に、「洗い>すすぎ1回目>すすぎ2回目」、というサイクルで、40Lの洗浄コースなら合計120L(40Lx3)の水が必要になるわけです。

給水ステーションで、仮に1回20Lをもらって帰るとして、6往復とかまず無理ですよね。仮に1回やったとしても、2日後、3日後にはまた洗濯が必要となります。

能登支援の際には、水処理会社という側面としても行っていたため、洗濯排水の浄化に実験的に取り組みましたが、なかなかうまくいきませんでした。

首都直下地震が発生した場合、どう乗り切るかですが、3つ選択肢があると思っています。

地下水型のコインランドリーを利用する

銭湯にはコインランドリーがセットで併設されているケースが多いのですが、こちらも地下水が水源の場合、利用できる可能性があります。普段の何倍もの混雑になると思いますが、利用可能な選択肢の1つです。

水を使える地域で洗濯する

能登支援をしていた我々が金沢に戻って洗濯していたように、水が使える地域まで行き、洗濯と入浴をしてくる、という手段があります。ただ、交通手段があるか、資金や時間の関係を考慮する必要があります。

洗濯支援サービスを利用する

能登震災の際も、ボランティアや最低限のお金を取って洗濯できるようなサービスを行っていたところがありました。生活の周りでこのサービスが展開されたら、ラッキーかもしれません。ただし、あまりこういうことを考えたくはないのですが、これまでの風潮として詐欺被害も多くなる(特に災害時)と思いますので、利用は慎重になさってください。

特殊な洗剤を使って洗濯する

能登支援の際に知った「海へ」という製品がありました。「洗い」の工程のみで洗濯終了できすすぎがいらない洗剤です。私の洗濯物も何度か洗いましたが、匂うとか汚れが落ちなかった、というのはなかったです。逆にベルガモットのいい香りがしました。

この製品を洗濯排水の浄化実験で使用しましたが、他の洗剤よりも圧倒的にろ材への負担が少なく、全員がこの洗剤を使用してくれるなら、洗濯排水の浄化サービスも成り立つなと思えるような製品でした。ただ、お値段が多少高いです。それでも1回あたりの洗剤のお値段にすれば、40L分の洗濯をするとして、60円ですし、災害下で少量の水ですすぎ要らずに洗濯ができるというのは最高です。

40Lの洗濯に通常なら、すすぎ分も入れて120Lを用意しなければならないのですが、こちらは40Lで済むので、日々の生活の中で水の使用を節約し、貯めていけるようであれば、考えられる手段かなと思います。私は、防災グッズの1つとして1個保管しています。

弊社のサービスを利用する(計画・行政への営業中)

別途どこかで書きますが、災害時に洗濯用の水を作り、洗濯サービスを展開するという提案を東京都に間もなくかけようとしています(弊社は水の浄化装置を提供)。これが間に合えば、都内の主要な公園で洗濯が可能になるかもしれません。

トイレ

トイレは、排せつ後の流し水ですが、排せつ用の袋(黒のビニル袋)+凝固剤で対応可能ですので、準備したほうがよいと思います。普段の便器にセットして使うもよし、専用の簡易便器を購入しておき、必要となったら組み立てて使えるようにするのもうよいです。

また、自宅の近くに仮設トレイが設置された場合は、できるだけそれを使うでもよいと思います。

トイレの流し水は結構水量を使います。ボタンで排水ができるタイプの便器だと、節水モードを選べますが、超節水モードでも4L程度は1回に流します。普通の節水モードで10~12L です。これを凝固剤に変えたり、仮設トイレを使用することで流し水を節水できます。

なお、余談ですが、能登震災の際に痛感したのは、ウォシュレットの代わりになる専用のウェットシートが必須ということです。通常よりも入浴できないという不衛生な状況で、特に汚れやすい部分を清潔にしておくことは重要かなと思います。流せるタイプだと、そのまま捨てることができるので、さらに便利です。

「流せるおしりセレブ」画像
「流せるおしりセレブ」で、災害状況でもすっきり清潔

まとめ

普段水を使う生活に慣れていても、意外に水を使わなくても過ごせるものです。

それでも、洗濯だけは大量の水を必要とします。

また、入浴では身近な銭湯が震災の際に活躍してくれるかもしれません。普段から利用してみて、「ここは地下水ですか?」と聞いておくことも、万が一の場合の役に立つかもしれません。

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