井戸には大きく分けて「浅井戸」と「深井戸」という種類があります。
「浅井戸は浅い場所にある井戸、深井戸は深く掘った井戸」と考える方も多いかもしれません。
しかし、井戸の分類は単純な掘削深度だけで決まるものではありません。
重要なのは、地下のどの層にある地下水を利用しているかという点です。
特に重要になるのが、不透水層(または難透水層)と呼ばれる、水を通しにくい地層です。
今回は、不透水層と地下水の関係から、浅井戸と深井戸の違い、それぞれの特徴や水道用途での考え方について解説します。
地下水を理解するために知っておきたい「不透水層」と「帯水層」
地下には、さまざまな種類の地層があります。地層によって、水の通しやすさは異なり、水を通しやすい地層を「透水層」、水を通しにくい地層を「不透水層(難透水層)」と呼びます。また、地下水を蓄えている地層を「帯水層」といいます。
地下水は、この帯水層の中に存在しています。
例えば、
- 砂や砂礫の層 → 水を通しやすい
- 粘土層など → 水を通しにくい
という特徴があります。
不透水層は、地下水の流れを遮る役割を持つため、その上下で地下水の状態が変わることがあります。この不透水層との位置関係によって、浅井戸と深井戸が区別されます。
浅井戸とは?最初の不透水層より上の地下水を利用する井戸
浅井戸とは、一般的に地表から最初に現れる不透水層より上にある地下水を利用する井戸です。
構造としては、
地表
↓
地下水(自由地下水)
↓
不透水層
という形になります。
この地下水は、上部を水を通しにくい層で覆われていないため、「自由地下水」と呼ばれます。
雨水などが地下へ浸透し、比較的浅い場所に蓄えられた地下水を利用します。
なお、不透水層が複数存在する場合もありますが、その場合は一般的に、地表から最初に現れる不透水層を基準として浅井戸・深井戸を判断します(以下の通り)
地表
↓
地下水(自由地下水):浅井戸
↓
不透水層
↓
地下水(自由地下水):深井戸
↓
不透水層
↓
地下水(自由地下水):深井戸
↓
不透水層
↓
地下水(自由地下水):深井戸
↓
浅井戸の特徴
表流水よりは水質変動が少ない
浅井戸は地表に近い地下水を利用するため、周辺環境の影響を受けやすい特徴があります。
一方で、河川や湖などの表流水と比較すると、地下を通過する過程で一定のろ過作用を受けるため、水質変動は比較的小さいという利点があります。
そのため、用途によっては利用されています。
例えば、
- 散水用水
- 農業用水
- 一部の生活用水
などです。
水道用途では無処理利用を前提にしない
一方で、飲用を含む水道用水として浅井戸を利用する場合は、通常、無処理での利用を前提として計画することはありません。
理由は、地表に近い地下水であるため、
- 降雨の影響
- 周辺土地利用の影響
- 農地や生活環境からの影響
を受ける可能性があるためです。
そのため、水道用途で浅井戸を利用する場合には、
- 水質検査
- 必要な水処理設備
- 継続的な水質管理
を前提として計画します。
伏流水や湧水も浅井戸と同じ考え方が必要
地下水を利用する方法として、井戸以外にも伏流水や湧水があります。
伏流水とは、河川などの近くの地下を流れる水を利用するものです。
また、湧水は地下水が自然に地表へ現れたものです。
これらは自然由来の水であり、比較的水質が安定している場合もあります。
しかし、浅井戸と同様に、
- 降雨
- 周辺環境
- 地表からの汚染
の影響を受ける可能性があります。
そのため、水道用途として利用する場合には、水質確認や必要な処理を行うことが重要です。
深井戸とは?不透水層より下の帯水層を利用する井戸
深井戸とは、一般的に不透水層より下にある帯水層の地下水を利用する井戸です。
構造としては、
地表
↓
浅い地下水
↓
不透水層
↓
帯水層(地下水)
という形になります。
不透水層の下にある地下水は、上下を地層に囲まれているため、水圧を受けた状態になっています。
このような地下水を「被圧地下水」と呼びます。
深井戸では、この被圧帯水層を利用することが多く、水道用途の水源として広く利用されています。
深井戸の特徴
地表環境の影響を受けにくい
深井戸の大きな特徴は、地表からの影響を受けにくいことです。
不透水層によって上部から隔てられているため、
- 雨水
- 生活排水
- 地表由来の汚染物質
などの影響を受けにくくなります。
そのため、生活用水や施設用水など、安定した水質が求められる用途で利用されます。
安定した水量を確保しやすい
適切な帯水層を選定できれば、長期間安定した水量を確保できる可能性があります。
そのため、
- 住宅の水道用途
- 地域共同の水源
- ホテルやレジャー施設
- 工場用水
などで深井戸が採用されることが多くあります。
深井戸でも処理が必要な場合があります
ただし、「深井戸だから必ずそのまま飲める」というわけではありません。
深井戸では地表由来の影響は受けにくい一方で、地下の地質由来の成分が水に溶け込む場合があります。
代表的なものとして、
- 鉄
- マンガン
- ヒ素
- 硬度成分
- 塩分
などがあります。
そのため、深井戸でも水質検査を行い、必要に応じて除鉄・除マンガン設備などの水処理設備を設置します。
浅井戸と深井戸の違い
浅井戸と深井戸の違いを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 浅井戸 | 深井戸 |
|---|---|---|
| 基準 | 最初の不透水層より上の地下水 | 不透水層より下の帯水層 |
| 地下水の種類 | 自由地下水 | 被圧地下水 |
| 地表影響 | 受けやすい | 受けにくい |
| 水質変化 | 比較的大きい | 比較的小さい |
| 水道用途 | 処理を前提に利用 | 多く採用される |
| 注意点 | 地表由来の影響 | 地下由来成分 |
水道用途ではなぜ深井戸が多いのか?
水道として利用する水には、
- 安定した水量
- 安定した水質
- 長期間利用できること
が求められます。
そのため、住宅、地域水道、施設用水などでは深井戸が計画されることが多くあります。
ただし、重要なのは「深ければ良い」ということではありません。
大切なのは、
- 必要な水量を確保できるか
- 水質が利用目的に適しているか
- 維持管理が可能か
という点です。
地域によって地下の状態は異なるため、調査や探査によって適切な地下水を判断することが重要になります。
まとめ
浅井戸と深井戸は、単純に「浅い場所を掘るか、深い場所を掘るか」という違いではありません。
重要なのは、不透水層との位置関係と、どの帯水層の地下水を利用しているかです。
浅井戸は地表に近い地下水を利用するため、表流水より水質変動は少ない一方で、地表環境の影響を受けやすく、水道用途では処理や管理を前提に計画します。
一方、深井戸は不透水層より下の帯水層を利用するため、水道用途の水源として多く利用されています。
しかし、深井戸でも地下由来の成分によって水処理が必要になる場合があります。
井戸づくりでは、浅いか深いかだけで判断するのではなく、利用目的や必要な水量、水質条件に合わせて適切な井戸を計画することが重要です。
