1. 新商品「VALCON(バルコン)」開発の背景
小規模水道の現場、特に中山間地域での設備管理において、長年解決されてこなかった課題があります。「電源の確保」という壁です。
山間部の水源施設や、集落から離れた取水地点には、商用電源が届いていないケースが珍しくありません。バルブの自動制御を導入したくても、制御装置を動かす電源がない。太陽光パネルと蓄電池で電源を自前で用意しようとすれば、設備コストが跳ね上がり、維持管理の負担も増えます。結果として、定期的な人員巡回による手動操作に頼らざるを得ない状況が続いてきました。
また、別の文脈でも同様のニーズが存在します。水処理プラントの実験・テスト環境や、客先へのデモンストレーション現場では、バルブ制御を自動化したい場面がありながら、制御盤の改造や電源の引き込みという高いハードルが、その実現を阻んでいました。システムを頻繁に組み替える開発環境でも、独立して動作する弁制御装置へのニーズは根強くあります。
「電源がなくても動く。電波がなくても動く。それでいて、確実にバルブを制御できる。」
この一見相反する要求に応えるために開発されたのが、自動バルブ制御装置「VALCON(バルコン)」です。
2. VALCON 3つの主要スペックと優位性
驚異の低燃費:単三電池+9V角型電池駆動
VALCONの動力源は、市販の単三電池と9V角型電池です。コンセントも、太陽光パネルも、蓄電池も必要ありません。電源インフラが存在しない場所でも、電池を入れるだけで即座に稼働します。
この構成で実現した年間維持費は、電池交換コストとして約1,000円程度です。従来、電源確保のために数十万円規模の設備投資が必要だった環境を考えれば、このコスト水準は革新的と言えます。電池の入手性も高く、現地調達が難しい山間部でも、最寄りのコンビニやドラッグストアで補充できます。
スケジュール制御:最大1ヶ月先までのプリセット
VALCONは、バルブの開閉操作を最大1ヶ月先までスケジュールとして事前設定できます。「毎日6時に開いて18時に閉じる」「週に3回、特定の時刻に開閉する」といった定期的な操作パターンを、あらかじめプログラムしておくことで、設定期間中は現場への訪問なしにバルブが自動制御されます。
巡回頻度を大幅に削減できるこの機能は、人手不足が深刻な小規模水道の維持管理において、直接的な工数削減効果をもたらします。
3台個別制御:1台のコントローラーで最大3バルブを管理
1台のVALCONコントローラーで、最大3台の電動弁を個別に制御できます。それぞれ異なるスケジュールを設定することが可能であり、複数の系統を持つ施設においても、1台の装置でまとめて管理できます。
コントローラーの台数を最小限に抑えながら、複数のバルブを柔軟に制御できるこの設計は、設備コストの削減と管理の簡便化を同時に実現します。
3. 「電磁弁」ではなく「電動弁(KITZ社製)」を採用した理由
バルブの自動制御装置を設計する際、電磁弁を採用するアプローチは一般的です。しかしVALCONでは、KITZ社製の電動弁(ボール弁構造)を採用しています。この選択には、明確な技術的根拠があります。
濁質への圧倒的な耐性
電磁弁は、弁体を電磁力で直接駆動するシンプルな構造を持つ一方で、弁座部分の隙間が小さく、水中に含まれる泥や夾雑物が詰まりやすいという弱点があります。水質が安定した清水系では問題が少ないですが、山間部の水源や初期ろ過前の水を扱う環境では、詰まりによるトラブルが頻発するリスクがあります。
一方、ボール弁構造の電動弁は、球状の弁体が回転することで流路を開閉します。この構造は流路が大きく開放されるため、泥水や砂粒、繊維状の夾雑物が混入した水に対しても高い耐性を持ちます。小規模水道の現場で扱う水は必ずしも清澄ではなく、この耐濁質性は実用上の信頼性に直結します。
省電力設計による長期電池駆動の実現
電磁弁は、弁を開いた状態を保持するために継続的な通電が必要です。これは電池駆動との相性が悪く、バッテリーの消耗が早くなります。
KITZ社製の電動弁は、モーター駆動で弁体を回転させて開閉を行い、開いた状態・閉じた状態それぞれを機械的に保持します。つまり、動作時にのみ電力を消費し、状態を維持するためには電力が不要です。この「動作時のみ通電」という設計が、単三電池と9V角型電池という限られた電源での長期駆動を可能にしています。
4. 活用シーン:実務での具体的なシミュレーション
山間部の水源管理:巡回頻度の削減と安全確保
山間部に設置された取水施設では、現状では定期的な人員巡回によるバルブの手動操作が行われているケースがあります。積雪期や台風シーズンには、巡回そのものが危険を伴う作業になります。
VALCONを導入することで、バルブの開閉操作をスケジュール制御に移行できます。月に数回の巡回を、異常確認を主目的とした最小限の訪問に減らすことが可能になり、作業員の安全確保とコスト削減を同時に実現します。
プラントのテスト運用:制御盤を改造せずに自動化をテスト
既存のプラントに新しいバルブ制御のロジックを試したい場合、通常は制御盤の改造や追加配線が必要になります。これは工事コストと停止リスクを伴う作業です。
VALCONは既存の制御系統から完全に独立して動作するため、制御盤に手を加えることなく、特定のバルブのみを自動制御のテスト対象にすることができます。本番システムへの影響ゼロで、新しい制御ロジックの検証が可能です。
客先デモ・模擬実験:スマートな実験環境の構築
客先でのデモンストレーションや大学・研究機関での模擬実験では、実験装置の設置場所に電源コンセントが存在しないケースが少なくありません。延長コードを引き回したり、電源の借用交渉をしたりという手間が、実験の準備コストを押し上げていました。
VALCONは電池駆動のため、どこにでも持ち込んで即座に稼働させることができます。実験環境の構築がシンプルになり、デモの現場でのプロフェッショナルな印象にも貢献します。
開発環境:頻繁な組み替えに対応する独立した弁制御
システムの開発・改良を繰り返す環境では、配線や制御の構成を頻繁に変更する必要があります。固定された制御盤に組み込まれた弁制御は、この柔軟性の妨げになることがあります。
VALCONは独立したユニットとして、必要な場所に必要なタイミングで接続・切り離しができます。開発フローの中でバルブ制御を柔軟に組み替えられる環境を、低コストで実現します。
5. 将来の展望とラインナップ
現行のVALCONは、呼び径50Aまでの電動弁に対応しています。小規模水道や実験装置、プラントの補助系統など、多くの用途をカバーできるサイズ感です。
一方で、より大口径の配管系統への適用ニーズも存在します。現在、需要の動向を踏まえながら、呼び径250Aまでの大型ボール弁に対応したバージョンの開発を検討しています。大規模な水道施設や工業プラントへの展開が視野に入れば、VALCONの適用範囲はさらに広がります。
製品の詳細仕様、価格、お問い合わせについては、VALCON特設ページをご覧ください。
