水道料金高騰は食い止められる。水道法から読み解く「原価低減」の鍵と、粗ろ過導入による財政再建

目次

1. 迫りくる「水道料金高騰」の正体

全国各地で老朽化した水道管が破裂するニュースが続いています。道路が陥没し、周辺が浸水し、広範囲で断水が発生する。その映像が報道されるたびに、「うちの地域は大丈夫か」という不安と、「修理にかかる費用は誰が払うのか」という疑問が広がります。

そしてその疑問に対する答えとして、水道料金の値上げという話が各地で現実のものになっています。総務省の調査によれば、水道事業体の約4割が今後10年以内に料金改定を検討しているとされます。人口減少で収入が減る一方、老朽化対策の費用は増える。この構造的な矛盾が、料金高騰を不可避のものとして迫っています。

しかし本当に、値上げは避けられないのでしょうか。水道料金の決まり方を法律の条文から読み解くと、「原価を下げることで料金上昇を抑える」という正攻法が見えてきます。

水道法第14条が定める料金の原則

水道法第14条は、水道料金を「能率的な経営の下における適正な原価を超えないものであること」と規定しています。つまり、料金は原価に基づいて決まります。そして水道事業の原価は、大きく三つの要素で構成されます。営業費用(人件費・動力費・薬品費・修繕費など)、減価償却費(設備投資の償還)、そして支払利息(建設資金の借入に対する金利)です。

この構造を理解すれば、料金を抑えるための方向性が見えます。原価を下げること——それが、値上げを回避するための唯一の正攻法です。


2. なぜ今の水道は「高い」のか?——高コスト構造の分析

現在の水道コストが高い原因は、大きく二つの要因に集約されます。

急速ろ過・高度処理の「負債」

高度経済成長期から整備が進んだ急速ろ過方式の浄水場は、大量の水を速く処理する能力を持っています。さらに水質向上への要求が高まる中で、オゾン処理や活性炭吸着といった高度処理設備が追加されてきました。

これらの設備は確かに水質を改善しましたが、代償として膨大な動力費と薬品費を生み出しています。オゾン発生装置の電力消費、凝集剤・塩素等の薬品の継続的な購入、活性炭の定期交換——これらが毎年の営業費用に積み上がり続けます。水質を上げるほど、コストも上がるという構造が、現在の水道原価に深く埋め込まれています。

更新サイクルが生み出す「資産維持の連鎖」

急速ろ過方式の浄水場は、機械駆動部を多く持つシステムです。ポンプ・撹拌機・汚泥掻き寄せ機——これらは数年ごとのオーバーホールと部品交換を要し、施設全体では30年程度での全面的な大規模改修が繰り返されます。

大規模更新のたびに建設資金の借り入れが必要になり、その元利返済が減価償却費と支払利息として原価に乗り続けます。更新が終わったと思えば次の更新計画が始まる——この「更新の連鎖」が、水道原価を構造的に押し上げています。

老朽管の更新というまったく別の課題も並行して発生しており、浄水場と管路の双方で資金が競合する状態が続いています。


3. 戦略的解決策:浄水プロセスの「ダウンサイジング」

コスト構造の問題を解消するための根本的な方策は、浄水プロセス自体を「高コスト型」から「低コスト型」へ転換することです。

粗ろ過×緩速ろ過への転換が原価に与えるインパクト

上向流粗ろ過と緩速ろ過を組み合わせたシステムは、薬品をほぼ使わず、大型の機械駆動設備を持ちません。この特性が、水道原価の三要素すべてにプラスの影響を与えます。

営業費用の面では、凝集剤・塩素などの薬品費が大幅に削減されます。電力消費が少ないため動力費も低減します。機械駆動部が少ないため修繕費も抑えられ、専門技術者による高頻度の保守が不要になることで人件費的な負担も減ります。

減価償却費の面では、機械駆動設備がないため、数年ごとのオーバーホールや30年での全面更新が発生しません。設備が長寿命化することで、更新サイクルそのものが延びます。

支払利息の面では、更新工事のための借入が減ることで、金利負担が構造的に下がります。

これらの効果が積み重なると、浄水場にかかるコストは急速ろ過方式と比較して大幅に低減できます。その浮いた資金を、最も緊急性の高い課題である老朽管更新に振り向けることで、トータルの住民負担を抑えながらインフラの維持が可能になります。

浄水場のコストを下げることと、管路を守ることは、同じ財布の話です。一方にかけ続ける資金を減らすことで、もう一方に振り向けられる資金が生まれる。この単純な原理を、プロセスの転換によって実現することが、財政再建の正攻法です。


4. 現実的な第一歩としての「粗ろ過アドオン」導入

「既存の急速ろ過浄水場を、すぐに緩速ろ過に切り替えることは難しい」という声があることは理解しています。設備投資の回収期間、技術者の経験移行、住民への説明——一度に全体を変えることへのハードルは確かに存在します。

しかし、段階的なアプローチとして、既存の急速ろ過の前処理として上向流粗ろ過を追加導入することは、現実的な第一歩になります。

前処理導入によって得られる即時効果

既存の急速ろ過設備をそのまま残しながら、その前段に粗ろ過を設置するだけで、複数の効果が同時に発現します。

まず、凝集剤の使用量が削減されます。前処理で濁質の大部分を除去した後の水は、急速ろ過での凝集処理に必要な薬品量が大幅に減ります。

次に、汚泥の発生量が減ります。凝集剤の削減に比例して生成される凝集汚泥が減少し、脱水・搬出・最終処分にかかるコストが圧縮されます。

さらに、後段の急速ろ過への負荷が軽減されることで、ろ過池の逆洗頻度が下がり、逆洗用の電力と捨て水が節約されます。急速ろ過設備へのダメージも減るため、機器の寿命が延び、オーバーホールの周期が延長されます。

初期投資は粗ろ過装置の設置費用のみで、大規模な工事を必要としません。その投資は薬品費・汚泥処分費・動力費の削減分として、比較的短期間で回収できます。

この「粗ろ過アドオン」は、将来の緩速ろ過への全面転換に向けた布石としても機能します。粗ろ過の運用経験が蓄積され、担当者の理解が深まることで、次の施設更新時に緩速ろ過への移行を選択しやすくなります。


5. 国とコンサルタントを動かす「新・水道ビジョン」

水道料金の高騰は、避けられない宿命ではありません。浄水プロセスの転換によって原価を下げるという方向性は、水道法が定める料金原則にも合致した、正攻法の解決策と信じています。

現在、水道政策の議論は老朽管の更新財源や広域化の促進、小規模分散化の推進に集中しています。しかしその議論の前提として「現在の高コストな浄水方式を維持し続ける」という固定観念が置かれていることに、私たちは問題意識を持っています。

浄水プロセスそのものを見直すことで原価構造を変える——この視点を、国の政策議論や主要コンサルタントとの対話の中に持ち込んでいくことが、水未来研究所の役割の一つだと考えています。現場での設計・施工の実績とデータを積み重ねながら、「原価を下げる水道」という提言を続けていきます。

水道事業の財政状況や、コスト構造の見直しについてお悩みの自治体・議会関係者の方は、まずはご相談ください。

水道のお困りごと・ご意見を募集しています!

このブログでは、みなさまの水道に関する声を広く集めています。

たとえば──

隣町の水道につながったら、水がまずくなった気がする

近所の昔からの湧き水を、地域の水道として使えないかな?

地域の水道で水道が届きにくいところがあるんだけど、改善できる?

うちの集落の水源がにごってきて心配。どうしたらいいんだろう?

水の味、料金、水質の不安、漏水や水量のことなど、どんな小さなことでも構いません。
みなさまの「気づき」「困りごと」「不安」を、ぜひお聞かせください。

まずは、みなさまの声を知ることから始めたいと思っています。
内容によっては、弊社で調査・対応を検討したり、行政や他の専門機関と連携して解決策を探ることもあります。

お寄せいただいた内容は弊社で厳重に管理し、ご本人の同意なく第三者に共有することはありません。
必要に応じてご連絡を差し上げ、ご了承の上でのみ外部と共有します。

📩 ご意見・ご相談は、以下のフォームからお気軽にお寄せください。
みなさまの声が、これからの水道をより良くする第一歩になります。

よかったらシェアください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次