1. 国交省の実証事業における弊社の役割
国土交通省が推進する分散型水道実証事業のもと、とある企業から依頼を頂戴し「小規模水道における小型緩速ろ過システムの実証事業」に、弊社は設計・現地設置の一部を担うパートナーとして参画しました。
本事業の目的は、原水水質の異なる複数のエリアに小型緩速ろ過システムを設置し、浄水処理の確実性と維持管理性を技術的に検証することです。上向流粗ろ過と緩速ろ過を組み合わせた処理フロー、深紫外線LEDによる紫外線殺菌、太陽光発電と蓄電池による独立電源化など、従来の小規模水道では実現が難しかった複数の要素技術が一体のシステムとして統合されています。
弊社への参画依頼は、水処理・水道分野における過去の設計実務と現場対応力が評価されたことによるものと考えています。企画から施工まで通しで対応できる専門会社としての強みを、この事業で発揮できたと考えています。
2. 設計・施工における具体的ソリューション
① 独立電源系統の設計
本システムの特徴の一つが、太陽光発電と蓄電池による独立電源化です。商用電力に頼らないこの設計は、離島や山間部など系統電力の確保が難しい地域への展開を見据えたものであり、弊社は太陽光パネルの設置位置の選定から発電ケーブルの引き込み方法、紫外線殺菌装置の電源選定と制御設計までを担当しました。
設置場所の決定にあたっては、発電効率の最大化だけを優先するわけにはいきませんでした。周辺の景観への影響を最小限にとどめたいという地域の声、機器が目立ちにくい位置への設置要望、そして地盤の状態による設置可否の制約——これらを総合的に判断し、周辺住民との協議を重ねながら慎重に位置を決定しました。技術的な最適解と、地域との合意形成の両立が、現場では常に求められます。
② 水理・プロセス制御
浄水ポンプの水位制御、各槽間の流量調整機構、処理後の排水を地中に浸透させる排水浸透機構の設計も弊社が担当しました。
排水浸透桝の設置位置については、近隣で従来から使用されてきた井戸への影響を心配する住民の声がありました。「排水が井戸に混入しないか」という不安は、技術的な説明だけでは解消できません。現地で実際に地形と流れを確認しながら、住民の方々と丁寧に対話を重ね、納得いただける位置を選定しました。
③ 現地における実装の工夫
限られた建屋空間の中に複数の処理槽・機器・配管・配線を収めることは、設計段階からの緻密な調整を要します。弊社が特に意識したのは、「使う人・管理する人の動線」です。
試運転時の確認作業がしやすいよう、メンテナンス対象の位置や計測ポイントへのアクセス経路を確保しながら機器を配置しました。また、地元の方々が日常的に機器周辺を行き来することを想定し、通路の幅、配管の取り回しを検討しました。維持管理の主体が地元住民であることを前提とした設計でなければ、実証事業を超えて実用に繋がらないという考えが、すべての判断の軸にありました。
3. 実証実験から得られた知見と確信
① システムの有効性
今回の実証を通じて得た最も大きな確信は、上向流粗ろ過と緩速ろ過の組み合わせが、カオリン系と思われる白濁系の水質に対して極めて有効であるという点です。
原水濁度300度から処理水濁度0.1度未満という数値は、従来の緩速ろ過単独では難しい水準です。高濁度時の弱点を粗ろ過で補う構成は、山間部の湧水や浅井戸を原水とする小規模水道において、広く応用できる可能性を持っています。適切な流量制御さえ確保できれば、このシステムは幅広い水質条件に対応できるという手応えを現場で掴みました。
② 課題と技術的フィードバック
一方で、収穫として大きかったのが紫外線殺菌装置まわりの知見です。深紫外線LED方式は低消費電力・長寿命・水銀フリーという特性を持ち、小規模水道への適用性が高いことを改めて確認できました。同時に、独立電源系統との組み合わせにおける電源選定と制御設計については、今後の製品開発に直接活かせる具体的なフィードバックを得ることができました。実証事業の副産物として、弊社自身の技術蓄積という意味でも、非常に密度の濃い経験となっています。
4. 今後の展望と支援体制
今回の実績を全国へ
今回の現場での施工実績に加え、同実証事業の信州地方での現場でも、活性炭ろ過装置後段の塩ビ配管設置業務を担当しています。原水水質も地域特性も異なる複数のフィールドで実装経験を積んだことで、小規模水道特有の課題——限られた予算・狭小な建屋・地元主体の維持管理——に対する実践的な対応力が確実に高まっています。
都市型の大規模水道とは異なる設計思想と現場感覚が、小規模分散型水道には求められます。弊社はその領域に専門特化した技術支援を、官民問わず提供できる体制を整えています。
小規模水道の実証実験や、分散型システムの設計・設置にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
