2025年6月17日、インドネシアのレウォトビ火山が噴火しました。火山活動が活発なインドネシアでは珍しいことではなく、これまもメラピ山やシナブン山などの噴火が近年でも確認されてきました。
今回の噴火は、津波や降灰の影響など、日本への直接的な影響はないと見られています。ただ、これを機に「もし日本で、たとえば富士山の大規模噴火が起きたら?」と思い、私たちの生活にどのような影響が起こりえるのか調べてみることにしました。
東京から見える「富士山」がもし噴火したら?
東京の多くの人が、日常的に目にする「富士山」。もしこの富士山が噴火したら、私たちの暮らしはどのような影響を受けるのでしょうか。
火山から流れ出る溶岩そのものや、爆風による岩石飛来などが都心に届くことは考えにくいですが、「降灰(こうはい)」の影響は偏西風により大いにあり得ると考えられます。風向きや噴火規模によっては、東京圏もかなり灰に覆われる可能性があり、実査に政府も富士山噴火シナリオによる生活への影響について検討していました。
▶降灰による影響の想定の考え方:⼤規模噴⽕時の広域降灰対策検討ワーキンググループ(2019年3月)

暮らしへの影響:一言で言えば「都市機能の麻痺」
- 外出が困難になる
火山灰の中には、火山性の微細なガラスが含まれています。これらが目に入ると激痛を引き起こし、吸い込めば肺を傷める可能性があります。普通のマスクでは防げません。N95相当以上のマスクとゴーグルが必要と言われます。桜島の噴火が頻繁に起こっている鹿児島でも目や呼吸器系に異常を訴える方もいらっしゃるようですが、外出している人がみな、というわけではなさそうです。この辺は、マグマの成分や、降灰の量にもよるのかもしれません。心配な方はゴーグルやマスクを準備しておくのは良いと思います。
- 停電が発生する可能性
灰が電線に積もって短絡・断線することで、停電が起きる可能性があります。また、とくに湿った灰は導電性が高く、送電システムでの漏電につながる可能性があり、これが原因として停電につながることもあるようです。
- 交通がストップし、食料や物資の供給が途絶える可能性
鉄道、道路、飛行機など、これらが一時的に麻痺し、食料や物資が通常通り手に入れることができにくくなることも発生するかもしれません。ただし、降灰がどの程度の規模でどのくらいの期間継続するかにもよりますので、震災への準備と同程度の準備(飲料水なら3L/日で最低3日、できれば7日)で問題ないのではとも思います。
水道への影響
実は、水道にも影響が出る(水道が止まる)可能性があります。それは次のような要因によるものです。
1. 水源の水質悪化
降灰が貯水池や河川に入り、濁度や微量成分による水質の影響により、水道としての水質基準を満たせない可能性があるため、安全確認が取れるまで送水が停止される可能性があります。
ただし、浄水場には一定量を貯水していますので、その水が枯渇するまで停止することなく、再び造水を開始し、実際には水質起因による水道停止の可能性は低いのではないかと思います。
2. 停電によるポンプ停止
電力喪失により、送水・配水のポンプが停止し、限定的なエリアでは蛇口から水が出なくなるケースも考えられます。東京都水道局では発電機の配置など手厚くなっているため、実際には発電機の運用により水道が停止せずに済むということも大いにあり得ます。一方、周辺の自治体ではこのようなバックアップ設備の配備が十分でない場合に水道停止に陥るケースが0ではないかと思います。
3. 機械設備への障害
降灰の微細な成分がモーターの回転体や制御機器に入り込み、機器の故障や電気的な不具合を引き起こす可能性もあります。
4. 緩速ろ過浄水場での目詰まり
緩速ろ過という水処理方式を採用している浄水場では、降灰の成分によるろ過池の目詰まりによって、造水ができなくなり水道が停止となる可能性があります。
最悪のケースでは…首都直下地震との連鎖リスクも?
富士山などの活火山の火山活動が地震を誘発する可能性は完全には否定できません。もし富士山噴火が首都直下地震を引き起こすような事態となれば、被害は圧倒的に甚大になります。
私たちにできる備えは何か?
火山噴火は地震と違って、噴煙が上がり始めるなど、ある程度の兆候を事前に確認することができます。その意味で、備えが「間に合せられる」災害ともいえます。
今のうちに備えたい最低限のポイントは大地震への備えと誓う部分もありますが以下の通り:
- N95マスクやゴーグルの備蓄
できれば防塵服も。自分の体を守るための装備を最低3日分用意しましょう。普段からアレルギー持ちだったり、喘息を患っていらっしゃる方などは特に準備が必要かと思います。 - 飲料水と生活用水の確保
1人1日3リットルを目安に、7日分の備蓄を。可能なら風呂の残り湯も保管しておくと生活用水に使えます。 - 簡易トイレや非常食の準備
物流が止まるリスクを想定し、1週間分を目安に。
まとめ:富士山噴火も「遠い話」ではない
インドネシアの噴火をきっかけに、「遠い国の話」として終わらせず、自分たちの暮らしを見直すことが大切です。とくに水道は生活の根幹を支えるインフラ。あらゆるシナリオを想定して、準備を進めておくことが、災害に負けない暮らしにつながります。