株式会社水未来研究所

100億人に届け命の水|小規模水道・実務ノウハウ通信 #20

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<目次>
【1. 今週の実務ノウハウ】
【2. 専門知の共有:中本名誉教授の視点】
【3. 災害下の水について】
【4. Q&A 現場の悩み相談】
【5. 編集後記】
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【1. 今週の実務ノウハウ】

IoTで省人化と言うけれど、実際どんな感じに組むの?

MGシステムのWebロガー2+AWSで作る設備監視システムの現実

IoT、クラウド、AIによる省人化。

最近では、技術記事や技術士試験の論文でも、このようなキーワードをよく目にします。

「センサーでデータを取得し、クラウドに蓄積し、AIで分析することで、省人化や業務効率化を実現する」

この流れ自体は間違っていません。

しかし、実際に設備を管理している技術者の方が知りたいのは、もう少し具体的な部分ではないでしょうか。

例えば、

* 今使っている設備の、どの情報をデータ化できるのか
* どのような機器を追加すればよいのか
* クラウドとは実際に何をしているのか
* どの程度の費用が必要なのか

といった点です。

そこで本記事では、産業用データロガーであるMGシステムの「Webロガー2 DL30-G」を例に、設備監視システムを実際に構築する場合、どのような構成になるのかを整理します。

IoTという言葉だけが先行しがちな中で、「実際にはこんな感じで作っていく」という現実的なイメージを持っていただくことを目的としています。

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1. IoT化の第一歩は「現場の情報をデータにすること」

IoTというと、クラウドやAIの話が注目されます。

しかし、最初に必要なのは、現場設備が持っている情報をデータとして取り出すことです。

例えば浄水場や下水処理場では、すでに多くの設備が計装信号を出しています。

これらの信号を取り込むことで、今まで人が現場で確認していた情報を、遠隔で確認できるようになります。

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2. どのような信号を取得できるのか?

2.1 アナログ信号(連続的に変化するデータ)

設備監視でよく使われるのが、4-20mAや1-5Vなどのアナログ信号です。

これらは、測定値を連続的な数値として扱うための信号です。

例えば4-20mAの場合、

* 4mA:測定範囲の下限
* 20mA:測定範囲の上限

として利用されます。

例えば水位計であれば、

4mA=0%
20mA=100%

として、

現在12mAだから水位50%

というように変換できます。

取得できる代表的なデータとしては、以下のようなものがあります。

| 設備・計器 | 取得できるデータ |
| ----- | --------- |
| 水位計 | 水槽や配水池の水位 |
| 流量計 | 送水量、処理量 |
| 圧力計 | 配管圧力 |
| pH計 | 水質状態 |
| 濁度計 | 濁度 |
| 温度計 | 水温、機器温度 |

つまり、現場ですでに使用している計測機器の多くは、IoT化の対象になります。

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2.2 デジタル信号(ON/OFF情報)

設備監視では、数値データだけでなく、「動いているか、止まっているか」という情報も重要です。

例えば、

* ポンプ運転中/停止
* バルブ開閉状態
* ファン運転状態
* 警報発生
* 故障信号

などです。

例えばポンプの場合、

「ポンプ室へ行かなければ分からなかった運転状態」

を、

「クラウド上の画面で確認できる状態」

にできます。

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3. 浄水場を例にすると、何が見えるようになるのか?

ここで、実際の設備をイメージしてみます。

取水ポンプ設備の場合

従来は、

「現場へ行ってポンプが動いているか確認する」

という作業が必要でした。

IoT化すると、

* ポンプ1号機:運転中
* ポンプ2号機:停止
* 電流値
* 流量
* 圧力

などを遠隔で確認できます。

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浄水工程の場合

水質管理では、

* pH
* 濁度
* 水温
* 流量

などが重要です。

これらを継続的に記録することで、

「現在値を見る」

だけでなく、

「昨日と比べて変化しているか」
「異常な傾向が出ていないか」

という分析が可能になります。

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配水池の場合

例えば、

* 水位
* 流入量
* 流出量

を監視できます。

巡回による確認から、

「常時監視」

へ変えることができます。

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4. Webロガー2 DL30-Gの役割

今回使用するMGシステムのWebロガー2 DL30-Gは、現場設備とクラウドをつなぐ役割を持ちます。

構成イメージは以下のようになります。

```
現場設備

センサー・計装信号
(4-20mA、1-5V、接点信号など)

Webロガー2 DL30-G

インターネット

AWS

Grafana

監視画面
```

DL30-Gの役割は、

「現場の情報を集め、記録し、外部へ送ること」

です。

つまり、現場側のIoTゲートウェイとして働きます。

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5. AWSとは何をするものなのか?

AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供しているクラウドサービスです。

簡単に言えば、

「インターネット上にある、自分専用のITインフラ」

と考えると分かりやすいです。

従来であれば、

* サーバーを購入する
* 設置場所を確保する
* バックアップを取る
* 故障対応をする

必要がありました。

AWSを利用すると、

* データ保存場所
* データベース
* プログラム実行環境
* セキュリティ機能

などを必要に応じて利用できます。

今回の設備監視システムでは、

「DL30-Gが取得したデータを安全に保存する場所」

として利用します。

例えば、

```
2026年7月24日 10:00

設備A

水位:72%
流量:250m3/h
ポンプ:運転中
```

というデータを蓄積していきます。

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6. Grafanaとは何をするものなのか?

AWSはデータを保存することが得意ですが、保存された数字を見るだけでは設備監視には使いにくいです。

そこで利用するのがGrafanaです。

Grafanaは、データをグラフや画面として分かりやすく表示するための可視化ツールです。

例えば、

* トレンドグラフ
* メーター表示
* 設備状態表示
* 警報表示

などを作成できます。

例えば、

```
配水池A

水位 72%

流量 250m3/h

ポンプ状態

1号機 ●運転中
2号機 ○停止
3号機 ▲異常
```

といった、現場監視盤に近い画面をクラウド上に作ることができます。

役割を整理すると、

| 役割 | 担当 |
| -------- | ------- |
| 測定する | センサー |
| 信号を集める | DL30-G |
| 保存する | AWS |
| 見やすく表示する | Grafana |
| 判断する | 人間 |

となります。

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7. 実際に構築する場合の費用感

では、実際に1設備をIoT化する場合、どの程度の費用になるのでしょうか。

一例として、以下のような構成を考えます。

ハードウェア費用

| 項目 | 概算費用 |
| ----------------- | ----: |
| DL30-G本体、入力カード、電源 | 約30万円 |
| センサー類 | 約50万円 |
| 通信機器 | 約5万円 |

ハードウェアだけで、おおよそ85万円程度になります。

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システム構築費

必要になる作業として、

* AWS環境構築
* データ保存設計
* 通信設定
* Grafana画面作成

などがあります。

費用としては、

* 小規模な構成:50~150万円程度
* 独自Web画面まで作成:200万円以上

になる場合があります。

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初期導入費の目安

今回のような設備監視システムの場合、

**150~300万円程度**

が一つの目安になります。

もちろん、取得する信号数、センサー種類、画面の作り込みによって変わります。

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8. まとめ

IoTによる省人化は、「クラウドにつなげれば完成」というものではありません。

重要なのは、

1. 現場設備のどの情報を取得するか

2. そのデータをどこに保存するか

3. 人が判断できる形でどう表示するか

を具体的に考えることです。

MGシステムのWebロガー2 DL30-Gのような産業用ロガーを利用すれば、既存設備で使用している4-20mAや接点信号などを活用しながら、AWSやGrafanaと組み合わせた設備監視システムを構築できます。

IoTは決して特別な技術だけで実現するものではありません。

現場にある情報を一つずつデータ化し、それをクラウドと組み合わせることで、日々の巡回や確認作業を減らし、より効率的な設備管理につなげることができます。


【2. 専門知の共有:中本名誉教授の視点】

水道公論 2023年4月号(第59巻第4号)pp.66-76, 信州大学名誉教授 中本信忠
「生物屋の緩速ろ過池研究 その19:『ブラジルでハングリー状態は普通と気づいた』」

ブラジルの湖沼調査で気づいた生物のハングリー状態

緩速ろ過研究の第一人者である中本信忠先生ですが、その研究観の原点をたどると、水道とは一見縁遠いブラジルでの湖沼調査にたどり着きます。今回は、若き日の海外経験から得た「生物は普段ハングリー状態にある」という気づきをご紹介します。

(1) 見知らぬ土地への一歩
1974年、中本先生は「仕事(研究)ができるかどうか分からない」まま、3か月間ブラジルへ渡りました。英語圏でないことに一抹の不安を感じながらも、現地に住む先輩から「何もなくていいから来い」と背中を押され、現地で研究の道を切り拓こうという情熱がその一歩を後押ししました。英語が通じない空港で出迎えと行き違いになるなど、初日から手探りの連続だったといいます。それでも歩みを止めなかった行動力が、その後の研究人生を大きく方向づけることになりました。

(2) ダム湖に見た生物の素顔
現地サンカルロス連邦立大学で出会ったのが、同じくプランクトンを専門とするツンジシ夫妻でした。手作りのような調査船でダム湖を巡り、栄養状態や季節変化を丹念に記録する共同調査は、のちのブラジルにおける湖沼研究の礎となりました。浅いダム湖では、表層と下層の垂直変化よりも、流入から堰堤までの縦断変化が際立つという知見も、この現地調査から得られたものです。乾期から雨期へと移る時期の調査では、それまで休眠していた糸状珪藻メロシラなどの微小生物が、雨とともに一斉に活動を始める様子が観察されました。「砂漠に雨が降ると生物が一斉に動き出す」のと同じ現象で、生物にとって栄養に飢えた状態こそが自然界の常態であり、条件が整った瞬間に爆発的に増える、という実感を得たといいます。

(3) 生態学と水道技術をつなぐ発見
この気づきは、ブラジル滞在中に知った上向流粗ろ過実験との思わぬ接点にもつながりました。当時サンパウロ大学衛生工学科で行われていた実験を、中本先生は後になって知ったといいます。ダム湖の生態系研究と水処理技術は、一見まったく別の分野に思えます。しかし、普段は控えめな生物が、環境が整うと一斉に増殖して水を変えていくという原理は共通していました。この経験は、のちの緩速ろ過研究において、ろ過池の微生物も普段は静かに息を潜め、条件が整うと一気に増殖して浄化を担うという理解を支える土台のひとつになりました。異なる大陸、異なる分野で、同じ自然の摂理が形を変えて現れていたことになります。

(4) 半世紀続く国際交流の果実
帰国後、日本とブラジルの科学技術協定が結ばれ、ツンジシ夫妻がブラジルからの最初の研究者として来日し、日光の湯ノ湖や諏訪湖、琵琶湖を案内する日伯共同調査が実現しました。ツンジシ氏はその後、ブラジル政府の要職を務めながら50年以上ダム湖調査を継続し、国際陸水学会の権威あるナウマン・テーネマンメダルを受賞しています。
一人の研究者が異国の地で掴んだ「生物は普段ハングリー状態にある」という気づきが、半世紀を超えて水と生態系の研究をつなぎ続けています。専門分野の垣根を越えた学びの積み重ねこそが、地域の水道インフラを支える私たちにも大切な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。


【3. 災害下の水について】

先日の技術士の試験に出された問題に、「昨今の災害被害を踏まえ、既存の水道施設(取水施設、浄水施設などの基幹施設)の計画的な改良・更新についての技術的課題を3つ述べる」という問題が出題されました。今回はこれを取り上げ、模範解答を考えてみました。

【1. 既存の基幹施設を計画的に改良・更新する際に考慮すべき技術課題】
(1)施設管理・アセットマネジメントの観点:
データや情報技術を活用した的確な劣化診断と既存ストックの長寿命化
高度経済成長期に整備された膨大な基幹施設が一斉に更新時期を迎える中、すべてを同時に更新することは不可能である。そのため、IoTセンサーやドローン、AI画像解析等の最新の情報技術を活用してコンクリート構造物や管路・設備の劣化状況を精緻に診断し、適切な修繕・更生工法を適用して既存施設を引き続き安全に活用するための長寿命化を図ることが課題である。

(2)防災・強靱化の観点:
客観的リスク評価に基づく施設の耐震化・耐水化とシステム強靭性の向上
東日本大震災や能登半島地震、近年の激甚化する豪雨災害の教訓から、基幹施設の機能停止は広範囲かつ長期的な断水を招き、社会経済に重大な影響を及ぼす。そのため、ハザードマップ等の客観的データに基づいて被災リスクを評価し、更新・改良に合わせて構造物の耐震補強や液状化対策、重要電気設備の高所移設等の耐水化を確実に実施して、システム全体の強靭性を高めることが課題である。

(3)施工・事業継続の観点:
稼働中施設における給水機能の維持と安全な施工計画の立案
取水施設や浄水施設は、市民生活を支えるため24時間365日稼働を停止できない。そのため、施設の改良・更新工事にあたっては、水質低下や給水停止(断水)リスクを回避しつつ施工を行う必要がある。他施設・他事業体との連絡管によるバックアップ体制の活用や、段階的な施工手順の確立、仮設設備の運用等を綿密に計画し、給水機能を維持したまま安全に更新を完遂することが課題である


【4. Q&A 現場の悩み相談】

住民が日常的に行うべき「最低限の点検作業」としては、何がありますか?

制御盤の液晶タッチパネル(ダッシュボード)で、各水槽の水位、水質(濁度・pHなど)、および警報が発報していないかを確認するだけです。


【5. 編集後記】

とうとう本格的な夏になりました。梅雨明け宣言が出されたかどうか把握していないのですが、もう夏本番といってもよいかと思います。
先日、中本先生とお話しする機会がありましたが、水道公論への投稿はそろそろ終わろうとしているみたいです。出版社からということではなく、先生のほうでもうほとんど書き尽くしたというところのようです。5年間の連載、本当にお疲れ様でしたという気持ちです。先生はもう84歳ですので、少し活動のペースを落として、ゆっくりされてもよいと思います。
さて、今週月曜日は技術士試験でした。一応、全部埋めましたが結果はどうでしょう。今年の問題として分散化とPFASを予想していたのですが見事当たりました。いつもの問題の出し方と違っていて、少しひねっていました。ただ、その後の自己採点で、出題意図と大きく外した回答を作成してしまっていたところもあり、今年は厳しかったように感じています。