株式会社水未来研究所

100億人に届け命の水|小規模水道・実務ノウハウ通信 #19

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<目次>
【1. 今週の実務ノウハウ】
【2. 専門知の共有:中本名誉教授の視点】
【3. 災害下の水について】
【4. Q&A 現場の悩み相談】
【5. 編集後記】
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【1. 今週の実務ノウハウ】

初心者でもできる!簡単な水質測定方法を紹介します

はじめに:水質は意外と簡単に確認できる

「水質検査」というと、専門の分析機関に依頼したり、高価な分析装置を使ったりするイメージがあります。

しかし現在では、簡易的な検査用品や小型測定器が数多く販売されており、初心者でも水の状態をある程度確認することができます。

もちろん、法律で定められた水質検査や詳細な分析には専門機関での検査が必要ですが、日常的な水質管理や異常の早期発見には簡易測定が非常に役立ちます。

今回は、初めて水質を測定する方に向けて、手軽にできる方法を紹介します。

1. パックテストによる水質測定

初心者に最もおすすめできる方法が、パックテストです。

パックテストは、試薬が入ったチューブに水を入れ、一定時間後の色の変化を標準色と比較することで水質を確認する方法です。

比色法による簡易測定なので、精密分析ほど正確ではありませんが、「現在の水がどの程度の状態なのか」を把握するには十分役立ちます。

測定できる項目も多く、

pH
COD(化学的酸素要求量)
硝酸態窒素
亜硝酸態窒素
アンモニア
硬度

残留塩素

など、用途に応じて選択できます。

価格は測定項目によって異なりますが、1箱で30~50回程度測定でき、5000円程度で購入できるものもあります。

河川、井戸水、池、水槽、排水など、幅広い用途で利用されています。

2. DPD法による残留塩素測定

水道水や消毒を行っている水を確認する場合には、DPD法による残留塩素測定が便利です。

DPD試薬を水に加えると、残留塩素の量に応じて赤色に発色します。

これを標準色と比較することで、塩素濃度を確認できます。

確認できることは、

消毒用の塩素がきちんと残っているか
塩素濃度が高すぎないか
配管や貯水槽で塩素が消失していないか

などです。

DPD試薬は100回分で1500円程度の商品もあり、比較用の測定器具も販売されています。

日常的な水質管理では、非常にコストパフォーマンスの高い方法です。

3. pH測定

pHは水質管理の基本となる項目です。

水が酸性なのかアルカリ性なのかを示す指標で、多くの水質管理で利用されています。

例えば、

水道水
地下水
魚類飼育水
工場用水
排水

などでは、pHの変化が水質異常の発見につながることがあります。

簡易的には試験紙でも測定できますが、繰り返し測定する場合はハンディタイプのpH計が便利です。

4. EC(電気伝導率)測定

EC(Electrical Conductivity)は、水の中にどれくらいイオン成分が含まれているかを見る指標です。

簡単に言うと、「水に何かが溶け込んでいる量の目安」です。

用途としては、

地下水の変化確認
肥料濃度管理
排水管理
水耕栽培

などがあります。

pH計とEC計が一体になったハンディ測定器も販売されており、3万円程度から購入できます。

5. 濁度や見た目による確認

最も簡単な水質確認は、実は「目で見ること」です。

確認ポイント:

透明度

浮遊物
沈殿物
泡の発生
異臭

など。

急に水が濁った場合や色が変化した場合は、水質変化のサインである可能性があります。

簡易濁度計や濁度チューブを使えば、数値として管理することもできます。

6. 目的別に選ぶおすすめ測定項目

水質測定は、目的によって測る項目を選ぶことが重要です。

目的 おすすめ測定項目
飲料水や井戸水の確認 pH、残留塩素、硝酸態窒素、硬度
河川や池の調査 pH、COD、濁度、DO
水槽管理 pH、EC、DO、アンモニア
排水管理 pH、COD、濁度、EC
消毒管理 残留塩素、ORP
まとめ:まずは簡単な測定から始める

水質測定は専門家だけが行うものではありません。

現在では、

パックテスト
DPD法
ハンディpH計
EC計
簡易濁度測定

など、比較的安価な道具で水の状態を確認できます。

重要なのは、最初から多くの項目を測定することではなく、「何を確認したいのか」を決めて、それに合った測定方法を選ぶことです。

日頃から水質を確認する習慣を持つことで、異常の早期発見やトラブル防止につながります。


【2. 専門知の共有:中本名誉教授の視点】

水道公論 2023年3月号(第59巻第3号)pp.60-68, 信州大学名誉教授 中本信忠
「生物屋の緩速ろ過池研究 その18:『生物は必死で増えようとしている。ろ過池の微小生物の活躍を考える。』」

藻の増殖リズムに学ぶ、省エネな水道浄化のヒント

(1) 湖と緩速ろ過池、似ている自然の営み
湖沼に暮らすプランクトンには、季節ごとに増えたり減ったりする栄枯盛衰があります。餌や水温、光といった環境の変化に応じて、その年その年で異なる顔を見せるのです。実はこの営みと同じ現象が、水道水をつくる緩速ろ過池の中でも起きています。緩速ろ過池の砂の上で育つ藻類の季節変化は、湖沼のプランクトンの変化とよく似た動きを見せることが、長年の観察から分かってきました。1970年代以降、研究者の関心は水域そのものだけでなく、集水域全体の生態系へと広がっていきました。ろ過池は集水域の環境と切り離せない関係にあり、決して人工的なだけの装置ではなく、自然の摂理をそのまま映し出す小さな生態系だといえます。

(2) 対数目盛りが明らかにする増殖の法則
単細胞生物は分裂によって倍、また倍と数を増やしていきます。この増え方を普通の目盛りで見るとある時点から急に増えたように見えますが、対数目盛りで表すと、数が少ない段階からすでに増殖の速度は一定であることが分かります。この測定の工夫は、東京大学の田宮博先生が手がけたクロレラの大量培養研究を参考にしたものです。当時、藻類は食料資源としても注目されており、田宮先生と同じ扁平フラスコを用いた培養実験も行われました。上田市の緩速ろ過池では、砂の表面に育つ藻の光合成活性を定量的に採取できる専用の道具を独自に開発し、対数目盛りと普通目盛りの両方で継続的に記録してきました。地道な計測の積み重ねが、細菌と藻という異なる生き物に共通する増殖の法則を浮かび上がらせたのです。

(3) 砂の表面にすむ生き物たちの営み
観察を重ねる中で、藻や微小動物は砂の表面とそのすぐ下にしか生息していないことも分かってきました。微小動物は餌を求めて砂面付近に集まり、餌が豊富な場所ほど生物の種類も豊かになります。ろ過池の中で藻の膜がはがれた場所があっても、そこにはすぐ新しい藻が繁殖を始めます。厳しい環境の変化にも柔軟に応える回復力は、緩速ろ過池が長年安定して機能してきた理由のひとつといえるでしょう。また、池ごとに水を張り替える回分処理では、池ごとに異なる生物群集が活躍するため、細かな砂の間を流れる水が層流となり、生物にやさしい環境が保たれることも見えてきました。

(4) 動力を使わない、日本発の生物浄化法
緩速ろ過は薬品や機械力に頼らず、自然の流れだけで水をきれいにする省エネルギーな仕組みです。急速ろ過と比べてろ過水の水質が優れているとされる一方、動力を必要としない分だけ運用コストや環境負荷を抑えられます。自然界の浄化のしくみを賢く生かしたこの仕組みは、日本で独自に育まれてきた生物浄化法です。桁違いに発達した急速ろ過の陰で、その価値が正しく評価されているとは言い難い面もあります。地道な観察と計測に裏づけられたこの知見が、これからの水道の現場でもっと広く活かされることを期待したいところです。


【3. 災害下の水について】

今週はこのトピックはお休みします。


【4. Q&A 現場の悩み相談】

砂や砂利以外の「特殊なろ材(アンスラサイトやヤシ殻活性炭)」は、何のために使用しているのですか?

アンスラサイトは急速ろ過層の最上部で粗大な濁質を捕捉し、ヤシ殻活性炭は前段で注入された「余剰オゾン」を安全に分解・除去するために積層しています。


【5. 編集後記】

今週、上向流粗ろ過施設が今年の3月に導入され運用が開始された大阪は高槻市の樫田浄水場を見学する機会に恵まれ、行ってきました。改めてその詳細について記す機会をブログかこちらで持ちたいと思いますが、一言で言って思っていた通り真価を発揮して、大活躍しているという印象を持ちました。また、案内くださった高槻市水道部の皆さんもその効果に満足されている様子がひしひしと伝わってきました。これまで年1回、3系統で年3回の砂かきが、6年ごと(3系統なので2年に1回)の砂かきになるといいですね、と期待の声を聴かせていただけました。いかに現状に満足しているかがわかるかと思います。

さて、今度の月曜日はいよいよ技術士試験。多忙に多忙で、昨日と今日(今日は金曜日)とブログも更新ができておりません。ただ、明日あさっては何とか勉強の時間をとって2日でどこまで食らいつけるか頑張りたいと思います。