水道の水源と、水道水の作り方

― 日本の“水道水づくり”をざっくり俯瞰 ―

蛇口をひねれば当たり前に出てくる水。

その旅は「水源」から始まり「浄水場」を経て、ようやく私たちの家庭に届きます。日本の水道はおおむね4つの処理法でつくられていることをご存じでしょうか。

熊本の水道は地下水。その源は阿蘇山から。

1. 水道の水源は主に3タイプ

  1. 表流水 … 川・湖・ダム(全国給水量の約 90 %)
  2. 地下水 … 地下 60m~120 m から汲み上げ(約 10 %)
  3. 海水淡水化 … 沖縄・福岡など数施設のみ(0.1 %未満)

出典:日本水道協会「わたしたちの水道」2024


2. 浄水方法4方式のシェア

処理方式全国シェア主な水源例示自治体
急速ろ過法77.4 %表流水荒川水系(東京都)
消毒のみ16.7 %地下水熊本市・昭島市
緩速ろ過法3.2 %表流水横浜市 金沢系統
膜ろ過法2.7 %表流水・海水北谷町(沖縄)

出典:日本水道協会「水道統計」2024


2-1. 急速ろ過(77.4 %)

凝集剤でゴミをまとめ → 沈殿 → 砂ろ過 → 塩素消毒。
短時間・大量処理 が強みで、都市部の浄水場はほぼこの方式です。
敗戦後に急速に普及した浄水方法です。

2-2. 消毒のみ(16.7 %)

地下水を塩素で消毒してそのまま送水。
熊本市は 100 % 地下水。電力・薬品コストが低い。
良質な地下水を消毒のみでご家庭に届けています。

2-3. 緩速ろ過(3.2 %)

植物プランクトンなど微生物の“生きた膜”で自然浄化。
水の中の濁度だけでなく、有機物や不純物を取り除くため、味がまろやかと評判。
昔は、ゆっくりろ過のため広い敷地と時間が必要と言われてきましたが、近年は関連技術も発展しているようです。

2-4. 膜ろ過(2.7 %)

ストロー状の中空糸膜でウイルスまで物理的に除去。
海水淡水化や PFAS 対応で今後増加が見込まれています。
他の浄水方法の後処理(高度処理)として、導入されるケースもあります。


3. 水質基準と安心のしくみ

  • 51 項目の法定水質基準(WHO より厳しい項目多数)
  • 配水管末端でも 残留塩素 0.1 mg/L 以上 を義務化
  • 毎日行う 水質検査 18 万件/年(全国平均)

4. まとめ

  • 日本の蛇口水の 8 割弱は 急速ろ過+塩素 で守られている
  • 地下水や膜ろ過など多様な技術が“おいしさ”と安全を下支え
  • 次回は 「急速ろ過法」を図解 し、味や安全性がどう作られるのかを掘り下げます。

🔖 今日の豆知識
コーヒーショップが「熊本の地下水で抽出」とうたうのは、“消毒のみ” ならではの軟水ゆえ。味の違いを確かめてみては?

緩速ろ過の水は、その良質さのため大手ビール工場専用の浄水場が建設されたことも。

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